兵庫県丹波市の氷上中学校(471人)が今年度教育課程を見直し、全学年で中間テスト(以下、「中間」)を取りやめた。生徒と保護者には年度初めに伝えた。代わりに小テストと単元テスト、実力テストを増やした。生徒の学習姿勢・教師の働き方ともに定期試験をピーク(頂き)とする従来のあり方から、分散型へ。東京・麹町中学校の学校改革を参考に、丹波市では初めての試みを始めた足立幸広校長にねらいを聞いた。
―実施しない理由は。
「何のために中間テストを行うのか『目的』を問い直した。学んだことを確認する、学んだことを定着させることこそが本来のテストの意味。本校では『中間』が、評定を出すための材料、一つの行事のようになっていた。本来の目的を達するには、中間テストじゃなくても可能ではないかと考えた。試験前だけ集中して勉強するより、日頃から少しずつ勉強した方が学力が定着する」
―どうやって学力の定着をはかり、評定をどうつける。
「教科ごとに考えてもらった。小テストを頻繁にし、章が終わると単元テストをする。例えば数学では、1学期に小テストを4回、単元テストを2回した。『中間』のように、出題範囲を広くしなくても、小まめに狭い範囲で定着しているかどうかを確認すれば良い。そもそも、評定は定期試験の成績だけで決めるものではない。学習にのぞむ姿勢など『4つの観点』から総合判断する。評定に必要な材料は、『中間』がなくても十分集められる」
―「中間」は同一学年は同一時間割。授業の中で行われる小テストや単元テストはクラスによって授業の進度が異なるので試験日がずれる。生徒が、問題を漏らすこともあるのでは。
「数学は全クラス一斉に単元テストをしているが、教科によって異なる。生徒には、『この問題が出たで』と積極的に他クラスに言うことではないと指導している。問題を教えてもらって正解しても、学力にならない。友だちに教えてもらって1度試験で少し良い点を取ったところで、頻繁に試験があ るので、評定に影響しない」
―教師の働き方改革に貢献するか。
「試験問題を作り、採点し、返却時に解説しと、数日に忙しさが集中する『中間』をやめることで、業務の集中度は薄まるが、小テスト、単元テストに分散するので業務量削減につながるかは分からない」
―期末試験はやめないのか。
「職員間で長いスパンで定着を見たいという意見がある。テストに向けて準備し、復習するというのは小学校にない中学校の学習文化でもあるので、今年度は期末試験を実施する。1、2年生では年1回だった実力テストを年3回に増やし、長期的な定着もみる」
―「中間」を実施しないことの検証は。普段は家で勉強しないけれど、定期テストの前はするので、せめて「中間」を実施し、試験前だけでも勉強させたいとの保護者の声も聞くが。
「その声も聞くが、『日ごろから勉強せざるを得なくなったので、以前よりよく勉強するようになった』との声も聞く。保護者には、学校評価のアンケートで聞く。生徒、教師の評価も聞く。より効果的により学力を定着させるのには何が良いのか、という観点から教職員で半年以上検討・準備をし、今回の判断に至ったことは理解頂きたい」