兵庫県丹波篠山市にある兵庫医科大学ささやま医療センターの産婦人科の分娩休止問題を受け、同市が来年4月以降に出産する妊婦に対し、「出産支援金」として10万円を支給することなどを盛り込んだ補正予算案の採決がこのほど、市議会本会議であり、賛成多数で可決された。きょう1日から対象となる妊婦に案内し、順次、支給する。分娩休止に伴う経済的、精神的な不安の解消が主な目的。市は支給期間について「新たな分娩体制が整うまで」としており、来年度いっぱいをめどにしている。
事業費は約1770万円。支援金10万円の対象者は、市に妊娠届を提出し、出産予定日が来年4月1日以降の人で、通院先は問わない。すでに妊娠届を提出している人でも、4月以降の出産予定なら対象となり、順次、案内を進める。
また、市健康課内にある子育て世代包括支援センター「ふたば」に「お産応援窓口」を新設し、日々雇用の助産師が、相談に応じて出産へのリスクが高い母親の自宅に出向き、産前、産後のケアを行う「マイ助産師」のような新制度の費用も含まれる。
同事業を巡る本会議の採決では、2議員が特に10万円の支給について、反対の立場から討論を行った。
ある議員は、同センターの運営に対して年間1億2600万円の補助を行っていることから、「センターへの支援金の減額で応じるべき」とし、「新年度の費用は3000万円ほどになる。同じ費用をかけるならば、市が産科医を公募し、医療センターに送り込むことで分娩を継続してもらうことも可能では」とした。
別の議員は、今後1年半という限定措置を問題視。「分娩休止に関係なく、子育て支援として今後も支給するものなら賛成するが、支給期間以降に出産を計画する人は、『なぜ、自分たちはもらえないのか』という声が出る」と指摘。「お金をもらうのは誰もがうれしいが、不安の軽減にはつながらない。産科医不足は全国的な問題。国、県に対して状況の改善を求めるべき」とした。
一方、予算案に賛成する立場の議員は、「分娩休止について市民の間に不安が広がっており、経済的、精神的な不安を少しでも解消するためには必要な施策」とした。
採決の結果、議長を除く17人の議員中、15人が賛成、2人が反対し、可決された。
事前に予算決算委員会では、酒井隆明市長が、「事業は2021年3月末をめどにし、その時点で分娩に関して何らかの体制が取れているならば打ち切る。取れていないならば再び検討する。体制整備に全力を挙げて取り組む」と説明した。財政的な負担について市行政経営部は、「1年半というスパンでの事業ならば、大きな影響は出ない」と話していた。