兵庫県丹波篠山市立町の黒大豆卸問屋「小田垣商店」と、同市泉に工場を持ち、焼きビーフンでおなじみの「ケンミン食品」(本社・神戸市)が昨年タッグを組んで開発した冷凍の黒枝豆―。今秋にとれた”新枝豆”の商品が近くお目見えする。”旬”の味をいつでも、どこでも味わえることを目的に販売を始め、国内はもちろん、海外にも進出。ただ、昨年は天候不順により不作だったため、両社は今年を本格的なスタートととらえる。「枝豆は世界中で食べられているが、その原点は日本。そして、日本で一番の枝豆は丹波篠山の黒豆。販売量を増やし、地域の農家にも貢献したい」と意気込んでいる。
丹波篠山の特産で、通常の枝豆よりも大粒でもっちりとし、甘く、味が濃いことが特長の黒枝豆。朝のうちにさや取り機で収穫した黒枝豆を選別して、工場に移送し、新鮮なうちにゆで、急速冷凍する。黒枝豆はさやをもいだ瞬間から鮮度が落ち始めるが、産地から工場までの距離が近いことで、鮮度と味を保ったまま、大量に冷凍黒枝豆を生産し、全国に届ける。
小田垣商店によると、おせちの定番、黒大豆が完熟する前に収穫して枝豆の状態で味わうスタイルでの販売は、1984年に同社が始めた。黒大豆の今年の作柄を見てもらうために、完熟前の豆を各地に送ったところ、「枝豆でもおいしい」と評判になったことから、新しい食べ方として販売を始めたという。
当時は「邪道」とも言われたが、人気漫画「美味しんぼ」に登場するなどして人気に火がつき、一躍、秋の丹波篠山を代表する味覚になった。
ただ、秋の一時期にしか味わえず、日持ちもしないことから、流通は地域も期間も限定されているため、良質な豆を集荷、選別できる問屋と冷凍技術を持つ企業が手を組んだ。
昨年は2トンを商品化。両社の販路を駆使して全国に販売し、国内の消費者はもちろん、香港の高級スーパーなどでも販売した。通常、秋しか食べられないものが夏でも食べられるとあって、高い評価を得ているという。
小田垣商店の小田垣昇社長は、「今年は若干、さやの数が少ないが、品質は良い」と笑顔。「黒大豆にすると手間がかかり、農家一戸でたくさんの面積はできないが、枝豆ならば、よりたくさん収穫できる。生産者が減る中、冷凍枝豆の販売量を増やし、農家にも貢献できれば」と話している。
両社がそれぞれの販路で販売。ケンミン食品は、200グラム入り900円(税抜き)、小田垣商店は150グラム入り630円(同)。