兵庫県丹波篠山市にある兵庫医科大学ささやま医療センターの産婦人科の分娩休止問題を受け、市内の母親と助産師の女性2人がこのほど、母親らを対象に分娩への不安や理想の出産などを語るイベントを開いた。参加した母親らは、妊娠について「喜びが一番」としながらも、「出産に至るまでには不安がつきまとう」など本音を吐露。一方で、「つわりの時は、夫の体臭さえ嫌だった。悪いとは思っている」と告白して会場がわくなど、ざっくばらんに語り合った。
陣痛来たら上の子どうする…
企画したのは同センターで出産した経験がある中村貴子さん(50)=二階町=と、助産師の成瀬郁さん(52)=味間南。「ハッピーバースプロジェクト」と銘打って活動を行っている。
参加したのは20歳代から70歳代までの妊婦や子育て中の母親、助産師、子育て支援関係者ら約40人。4つのテーブルに分かれて、妊娠や出産時の喜びや不安について語り合った。
妊娠については、「うれしさが9割9分だったけれど、不安も大きかった」「前の子を流産した時には、世の中がグレーに見えるほど落ち込んだ。次の妊娠の時にも、また落ち込むかもしれないと思った」などの意見があり、「移住してきたので頼れる人がおらず、とてもつらかった」という人もいた。
出産については、第2子以降で課題を感じる人が多く、「陣痛が来た時に夫が仕事だったら、上の子を誰に見てもらえばいいか、とても不安だった」「分娩や陣痛よりも、自分一人の時に病院にたどりつけるのかといつも考えていた」などと本音を吐露した。
「旦那教育しておくべきだった」
相談できる相手では、夫や家族、医師らが挙がる中、「助産師」を挙げる人も。「自分のことをわかってくれている助産師さんがいてくれて心強かった」という声もある一方、「出産時に初めて会う助産師もおり、事前に知り合っておきたかった」という人もいた。
出産に対する不安な声が多い中、「陣痛で苦しんでいるときに、夫がおにぎりを食べていたことは忘れない」「出産の時に旦那を教育しておくべきだった」などと、男性にとっては耳が痛い話題も飛び出し、笑顔と苦笑が会場に広がる場面もあった。
議論を受け、成瀬さんは、「インターネットやスマートフォンでいろんなことが調べられる時代だけれど、スマホは心に寄り添えないし、自分に合っているかもわからない。不安を一人で抱え込まずに、誰でもいいので相談できる人を見つけて」と呼びかけた。
「市民も意識変える」「できれば地元で」
医療センターの分娩休止については、参加者から、「今の状態では分娩継続は不可能。さまざまなリスクを抱える医師は重荷を背負っている」「まずは市民が『やってもらえるもの』という意識を変え、これからの良いお産のために議論を続けるべき」という意見が出された。
参加した2児の母(21)は、「いろんなお母さんの意見が聞けてよかった」と言い、「3人目も考えているけれど、医療センターの分娩がなくなれば、市内で産めるのは1カ所になり、妊婦が集中する。今のままでは市外に出ないといけなくなる。できれば、地元で産みたいけれど」と不安げに話していた。
中村さんは、「お母さんたちの思いが聞けた」と喜ぶ一方、「お産は時間との闘い。遠くの病院への緊急搬送やマタニティータクシーなど、具体的な支援策が必要になると感じた話していた。