結婚の多様性

2019.11.17
丹波春秋

 歴史学者の磯田道史氏によると、我が国の結婚の形はかつて、ずいぶんゆるやかだったという。同居してから挙式をしたり、妊娠してから同居したりしていた。そんなスタイルが古代から近世まで続いた。

 しかし、近代社会に入ってから極端に画一化された。恋愛、交際、挙式、同居、妊娠という順番に固定化され、多様性を失った。ところが今は、「できちゃった婚」とも言われる妊娠先行の結婚が珍しくなくなった。磯田氏は「この国の結婚形態は、再び多様化に向かっているように思われる」という。

 結婚式の会場も時代と共に変わってきた。昭和30年代までは家での式が主流だったようだ。花嫁を迎えた家に村の人たちがやって来て、喜びを共にしたという話をよく聞く。

 やがて公民館で式を挙げるようになり、そのうち業者の式場に移った。以前は丹波地域の業者の式場でも盛んに式が挙げられ、新郎新婦の晴れやかな姿を目にする機会が少なくなかった。幸せのおすそ分けにあずかったような思いがしたものだが、今は、そんな場面がめっきり減った。

 どうも丹波地域では挙式をする所がないと思われているようだ。しかし、実際はそんなことはない。式を挙げられる所はある。地元での挙式が今後増えればと思う。結婚の形と同様に式場も多様化に向かってほしい。(Y)

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