家紋の危機に警鐘鳴らす
鷹羽、カタバミ、フジなどをはじめ2万種もあるといわれる日本独自の意匠「家紋」を研究。インターネットサイト「家紋ワールド」を主宰し、掲載した家紋総数は5000近い。氏族の家紋や、その由来なども発信し、「日本は非常に名字が多く、大半の家に家紋も伝わる。わが家の家紋を知れば、先祖がどこで何をしていたのか、見えてくるかも」とほほ笑む。
日本史が好きで家系図などを調べていくうち、付随する「家紋」の洗練されたデザインに魅力を感じた。
広告会社に勤務していた20年ほど前、インターネットを会社の事業に活用することになり、「まずは自分でサイトを作ってみよう」と、家紋を題材にしたページを制作。以来、古文書や住民の協力を得て各地の家や墓に残る家紋を見に行くなど調査を展開し、コツコツとサイトを充実させてきた。
「発祥は平安後期とされ、武家の台頭や領地替えなどで爆発的に全国に広まった。江戸に入っても徳川の『三つ葉葵』を頂点にしつつ、庶民でも武家の流れをくむ人々が家紋を使いだす。そして明治、庶民も名字を名乗ることが許可されると家紋も広がった。家紋にはルーツがあり、自分の家や先祖を知ること、ひいては日本の歴史を知ることにつながります」
そんな家紋に危機が迫る。わが家の家紋を知らない人が増え、かつて家紋を入れていた着物文化も衰退し、「墓仕舞い」が進む。
「家紋に限らず、日本の文化が揺らいでいる」と警鐘。「おじいちゃんやおばあちゃんと話したり、お墓に行ってみてほしい。家や文化を守ろうという意識につながるはずです」と呼びかける。66歳。