兵庫県丹波篠山市南矢代にあり、主にアジアの女性を対象にした介護福祉士養成施設「篠山学園」でこのほど、「ふれあい交流フェスタ」が開かれた。企画したのは同施設の近くに住む全盲の酒井智彦さん(65)。留学生を前に、歌や落語などが披露されたが、出演したのも全員、酒井さんの友人の視覚障がい者ら。酒井さんは「学校を途中でリタイヤする留学生もいると聞く。視覚障がい者でもがんばっている姿を見せ、少しでも励みになれば」とエールを送った。
篠山学園は2017年9月、県立高校の跡地に開校。2年制で、ベトナム、中国、タイ、モンゴルなどからの留学生が在籍している。
近くに住む酒井さんは、留学生とあいさつを交わすうちに仲良くなったが、留学生が難しい日本語がわからなかったり、食事や生活が合わなかったりして、帰国するケースがあることを聞き、「日本を、丹波篠山市を好きになってほしい」と、励ます会の開催を同学園と地元住民でつくる古市まちづくり協議会に持ち掛けた。
イベントでは、酒井さんは司会進行を担当。出演者はすべて視覚障がい者で、日本福祉放送のカラオケ大会で優勝経験のある松本千鶴子さん(大阪)が世界平和を願う、アグネスチャンの「ピースフルワールド」など3曲を熱唱。半丸亭壽近さん(兵庫)が、子どもに長い名前をつけてしまった落語「寿限無」に、アジアのさまざまな言語を取り入れた「アジア寿限無」など2席、半丸亭さく作さん(京都)が1席を演じた。濱田明展さん(神戸)は津軽三味線を4曲を披露した。
最後に、濱田さんが「笑いヨガ」を指導し、留学生たちが実践。ゴリラをまねながら、「ホッホッホッ、アハッハッ」などと大声で笑い、会場は笑い声でいっぱいになった。
ベトナム人留学生のグエンティゴック・チャムさん(26)は「アジア寿限無がとてもおもしろかった」と笑顔。同協議会の中西肇会長は「出演者の方はみな、上手だった。留学生ののりも良く、盛り上がった」と話した。
酒井さんは、神戸学院大学卒業後、大阪の広告代理店で働き、39歳で独立。子どもの頃から弱視で、45歳で網膜色素変性症で全盲に。しかし、積極的に外出を心掛け、地元自治会では、20年以上前に地域活性化グループを立ち上げたほか、一人で電車に乗り、パソコン教室や笑いヨガ、ブラインドマラソンに通っている。
現在は来年、同市で開かれる「丹波篠山ABCマラソン」に出場するために、月に3回、伴走ガイドをつけて練習を積んでいる。
イベントを無事に終えた酒井さんは「なんとか留学生たちの反応があり、やって良かった。僕一人ではできなかったので感謝したい」と笑顔で話していた。