兵庫県丹波市に工房を構える仏版画家の観瀾斎(かんらんさい)さん(73)が、世界遺産の東寺(京都市)の食堂で9月から開いている14回目の作品展が今月22日で幕を閉じる。「慈愛とのであい」をテーマに、釈迦を抱く観音、その周囲で動物が祝福する姿を描くなど、愛があふれる作品が並ぶ。
慈悲喜捨の象徴の慈母観音に焦点を当てた、ガッシュ(不透明水彩絵の具)で描く「愛」と名付けたシリーズを展開。「愛の行進」は、釈迦と観音を中心に、天使の楽団が演奏する音楽に合わせ仏教の守護神の像が楽しく踊る作品。ほかに「愛(たんじょう)」、「愛(しあわせ)」などが並ぶ。いずれも、緑や黄色、空色など明るい色調がベースになっており、やわらかな雰囲気を醸し出している。
また、ピカソに挑戦した「アイリス観音」など、斬新な作品も。「令和」にちなんだ「令和観音」「令和富士」の版画などもある。
過去の同展で展示した28メートルの「百観音」、東日本大震災の復興を祈念し制作した「阿吽の双龍」(1・8メートル×4メートル)など、大作の木版画も展示し、世界中から訪れる人を魅了している。
観瀾斎さんは「世界平和を祈るなら愛。世界中の人に評価されてうれしい。東寺から愛を発信したい」と言い、「設営は丹波の人にお世話になった。丹波の良い空気と水のおかげで良い作品を制作できる。80歳まで続けられるようにがんばりたい」と話している。