「落とし紙」って知ってる? トイレットペーパー品薄の今 ロール紙に押されるも健在

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量販店で購入した「落とし紙」(1200枚入り)=左=と、弊社近くの生活雑貨店で買った「京花紙」(1800枚入り)。紙質の違いでこれだけのボリューム差=2020年3月6日午後零時13分、兵庫県丹波市柏原町柏原で

新型コロナウイルスの拡大に伴って流布されたデマの影響で品薄になっているトイレットペーパー。記者宅でも残りわずかになっていた。「どうしたものか」と、頭に浮かんだのが「落とし紙」。昔使っていたなぁ、今もあるんだろうかと懐かしい気持ちになり、取材エリアの兵庫県丹波市内で展開するホームセンターなど8店で探した。ロール紙に押されながらも、「落とし紙」は健在だった。

 

8店中7店「あった」意外に多い取り扱い
 「便所紙」「ちり紙」とも呼ばれる。下水道(浄化槽を含む)が普及する前、汲(く)み取り式だった頃は一般的に使われていた。やわらかい四方20センチほどの白い薄い紙を重ねて使う。使用後、そのまま便槽に「落とす」(捨てる)ので、「落とし紙」と呼ばれた。紙なら何でも「落とし紙」になり、新聞紙を手で揉んで柔らかくして使っていた時代もある。
 探索で訪れた最初のホームセンターでは品切れ。入荷見通しは立っていないとのことだったが、「取り扱いがある」ことが分かった。
 2軒目。ロール紙のトイレットペーパーが大量に並んでいたと思しき陳列台は品物がなかった。白さが目立つ棚の端に「落とし紙」(商品名は「ちり紙」)が4袋残っていた。1袋購入した。
 ここで、トイレットペーパーは巻紙(ロール紙)のイメージが強く、板様の紙はトイレ紙と認識されていないのでは、と仮説を立てた。しかし、この後の店ではことごとく売り切れていて、仮説は否定された。どの店も、巻紙の近くにあり、巻紙が売り切れれば、次善の策で買われる。入手できたのは、「たまたま」だったようだ。
 8店中、7店が「落とし紙」を扱っていた。どの店も巻紙は複数種類扱っているが、「落とし紙」は1種類だった。
 4軒目のホームセンターで、わざと若い女性店員に「落とし紙ありますか」とたずねた。一瞬戸惑った後、同僚から「ボットン便所の」と助け船を出され、「ああ!」と、探している商品が理解できたようだった。
 前に買ったのがいつか分からないくらい久しぶりに買った「落とし紙」は、愛媛県八幡浜市産。再生パルプ100%で、水洗トイレに対応している。1袋に1200枚入っていて、ふかふかで、とても柔らかい。紙がちぢれている。
水に溶け、紙質柔らかく

落とし紙の比較。左の表面がちぢれているのが再生パルプ。京花紙は書道の半紙のよう

翌朝、弊社近くの生活雑貨店に「トイレットペーパー」の貼り紙を見つけた。灯台もと暗し。ロール紙も「落とし紙」もあった。「落とし紙」の袋には「ティッシュペーパー」と英語で書いてあった。「落とし紙」はティッシュペーパーと同じなのか?

 店主の男性(45)によると、定番で購入する高齢のお得意さんのために置いていて、年に数個売れる程度の商材。今回の騒動でロール紙が一時的に売り切れたため、在庫の「落とし紙」を店頭に並べたところ、8個ほど売れたという。
 ちなみに、店主の次男は小学3年生。当然、「落とし紙」を知らなかった。記者が「これ、何か知ってる?」と尋ねると、「ティッシュペーパーでしょ」「これがトイレットペーパーの代わりになるの?」という答えが返ってきた。
 「昔もこんなに紙質が柔らかかったかなあ」と記憶をたどっていると、店主が店の奥から、平安美人風のイラストと「高級京花紙」と包装紙に書かれた、時代がかった紙の束を持ってきてくれた。高知県土佐市産。いつ仕入れたものかは分からないが、これも「落とし紙」という。
 記念に購入し、違いを比べた。「京花紙」はつるつるで、書道用の半紙のよう。「京花紙」は水に溶けない。やわらかさも違う。時代にあわせた「落とし紙」の変化を感じた。
 紙製品全般の品薄は、回復の途についたとはいえ、調査時点ではほとんどの店でトイレ紙やティッシュペーパーが品切れだった。マスクは1つだけあった。噂で不安になった人が慌てて大量購入しなければ、ここまで極端な品不足を招かなかったのでは。「非常時こそ冷静に」と、空の棚を見てつくづく思った。
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