農学ぶ「農の学校」13人が卒業へ 昨年開校、全国初の通年農業公立学校 8人が市内就農、農の担い手に

2020.03.23
ニュース

丹波市内で就農する(左から)河手さん、古谷さん、荻野さん=2020年3月18日午後2時44分、兵庫県丹波市市島町上田で

昨年4月、兵庫県丹波市に開校した、新規就農を目指す人が栽培技術と農業経営を通年で学ぶ全国初の公立学校「市立農(みのり)の学校」の1期生13人のうち、8人が市内で就農または就職する。自身の農場を持って経営に乗り出したり、農家や農業関連会社に就職するなど、形は様々ながら農業に関わる仕事で市に定住する。市は修了者が市の農業の担い手になることを目標にしており、指定管理者として同校を運営する株式会社「マイファーム」(本社・京都市)の社員で、同校事務局長の木下智代さん(36)は、「思っていた以上の人が丹波市に残ってくれた。学校の活動で地元農家とつながりができ、今以上に地域と一緒につくる学校にできれば」と話している。1期生の卒業式はきょう23日、同校で開かれる。

 1期生は東京や千葉、島根など1都2府6県から15人が入学(うち2人は自主退学)。週5日、校舎周辺の農地で実習に励んだほか、座学で農場運営なども学んだ。また、地域の有機農業実践者「地域マイスター」からの指導も受けた。
 東京都のIT企業を退職し、入学した古谷浩二郎さん(44)は、同市内で農地を借りて独立する道を選んだ。30アールほどの栽培面積でスタート、利益率の高い果菜類を中心に栽培し、特に枝豆を追求するという。「農家は栽培だけではない。販路開拓や経営方法、経理など、やらなければならない“現実”を学んだ」と話す。市内での就農を選んだ理由について、「移住者が多く、市外から来た人が馴染みやすい環境にある。授業を通じ、農家とパイプができたことも大きい」と語る。
 一方で、さらに栽培技術を突き詰める人も。東京の会社を辞めて入学した河手大輔さん(37)は、JA丹波ひかみなどの出資法人「アグリサポートたんば」に、1年間の契約社員として就職し、イチゴを主力商品とするべく学びを深める。1年後に市内での独立を目指しており、「主要農産物はみんな作っているのでイチゴに目を付けた。丹波市は周りに農家も多いし、暮らして楽しい場所」と目を細めた。
 1期生で唯一の市内出身者、荻野啓介さん(46)は、父親から土地を継承し、「地域の景観、農業を守る」と意気込む。卒業後は水稲栽培を主力に、野菜類にも挑戦する。「どれくらいの作物を栽培するのかという“入口”の悩みもあるし、どこで販売するのかという“出口”の悩みもあるが、ステップアップしながらやっていきたい」と話している。
 市内で就農しない5人は、県外での独立や、農業関連会社への就職など。2期生は12人が入学する。

関連記事