新型コロナウイルスの感染拡大と緊急事態宣言の発令を受けて、学校現場が臨時休校となっている。子どもたちに保護者はどのようにして向き合えばいいか。専門職にアドバイスを請うた。2人目は、カウンセリングを通じて、児童・生徒や保護者の心をケアする専門職「スクールカウンセラー」で、兵庫県県教育委員会から同県丹波篠山市立丹南中学校に派遣されている二宮久美子さんに話を聞いた。
―休校は子どもたちにどう影響する
体調を崩す子もいれば、行動に出る子もいる。休みで「好きなことができる」と喜んでいる子でも、その裏側には漠然とした不安があると思う。
また、独りでいるとコロナ以外の、普段感じている不安も増幅される。特に中学生以上は思春期でもあり、親離れが始まる時期で心が不安定だ。
―変調のサインは
考えられるのは、▽眠りにくい▽気分の浮き沈みがある▽大きな声を出しがち▽イライラしがち▽妙にハイテンションになる―など。
また、不安を反映して「甘え」が出ることも。小さい子なら「抱っこして」、中高生なら「体調が悪い」などと言うかもしれない。
今は普通にしていても、後から不安障害として症状が出てくることもある。親から離れられなくなったり、暴れだしたり、ひどくなると薬が必要になる。
―どう対処すれば
これらは子どもからのSOSと思って。「何言ってるの」「前と同じようにしなさい」と言うのではなく、まずは受け止めて。おでこにちょっと手を当ててあげたり、背中をさすったりして、「親が変化に気付いてくれた」と思うようにしてほしい。
いずれにしても、とにかく大人はこまめに言葉をかけ、優しい雰囲気や笑顔、ボディータッチなどで安心感を与えることが大事になる。
カウンセリングの基本は、相手を遮らずに「聞く」こと。子どもたちは何度も話を聞いてもらうことで、不安を自分の中に落とし込んでいく。相手に答えを求めているのではなくて、頭の中で考えていることを出したがっている。
聞く側は相手の気持ちが分かるまで聞き、「こんなふうに思っているんだね」と返してあげて。ついつい、「こうした方がいい」と言いがち。それは正しい内容かもしれないけれど、子どもは聞いてもらうだけでいいことの方が多い。
―ゲームばかりしている子が多いと聞く
普段からゲームにはまってしまっている子のカウンセリングを多くしてきた。夜中、ずっとゲームをして部屋から出てこなくなる。そうすると、自律神経を崩し、「おなかが痛い」「熱っぽい」と言い出す。さらに進むと不登校になる。
何かに依存するのは、人との関係が切れていたり、うまくいっていない状態にあることが多いので、突然の休校という今の状況には懸念する。
また、ゲーム以外にもSNSなどオンライン上での問題が増えることを危惧する。オンラインゲームやチャットなどで見知らぬ人とつながり、抜けられなくなることで依存してしまうケースや、女の子の場合は出会い系などにも注意が必要になる。
―依存というほどではないが、普段よりも長い時間、スマホをいじっていたら
メールやラインなどで友だちと連絡を取っているようなケースならば、心の安定には必要なこと。また、ゲームなどであっても、ある程度は緊急事態なので大目に見てあげて。この状況でいつもと同じようにするのは無理がある。
―「依存している」と思うレベルの場合は
子どもが興味を持っているものを取り上げるのは難しいので、「やめなさい」と言っても余計に反発する。押さえつけるのではなく、「どんなゲームをやってるの?」「誰とやってるの?」などとアプローチして、話ができるようになってから、「心配している」とうことを伝えてほしい。
―テレビや新聞、ネットニュースなどはコロナの話題ばかり
不安をあおるので、あまり情報にさらしすぎない方がいい。DVDやおもしろい本など、子どもが興味を持つことに気分を持っていって。一方的に与えるのではなく、自主性がないと動かない。
子どもがもし、コロナの話題を聞いてきたときは、「そんなん考えんでいい」ではなく、正しい情報、安心できる情報を伝えて。
―大人も不安を抱えている
子どもをサポートするためには大人が落ち着いていないといけない。家庭で仕事をするようになっており、収入面などで悩んでおられることも考えられる。
なので、本当は大人のケアが大事だと思っている。普段のカウンセリングでも、一番多いのは大人だ。大人が「しんどい」と思ったときには、友だちでもいいし、行政でもいいし、とにかくどこかに相談してほしい。
「助けてということが恥ずかしい」と思いがちだが、それができないと結局、巡り巡って子どもに影響が出る。
―イライラして怒りそうになったら
「6秒」待って。深呼吸で言えば3回分。これだけで10の怒りが2や3になる。イライラして子どもに怒りをぶつけることは、想像以上の悪影響になると知っておいてほしい。
―今後、子どもたちの心理面に影響が出てきそうなことは
東日本大震災後、「地震遊び」や「津波遊び」をする子がいた。これから「コロナ遊び」も出てくるかもしれない。
不謹慎だと思う人もいるだろうが、これはカウンセリングでいう「プレイセラピー」。不安の元を遊びの中に取り込むことで、自分で消化しようとしているもの。いわば自己治癒の活動。見かけても叱るのではなく、見守ってあげて。
ただ、遊びではなく、咳をしている友だちを相手にした「コロナいじめ」のようなことをしていたならば、しっかりと注意しないといけない。
―学校再開後には
とにかく、子どもたちが思っていることを表現できるように心を砕きたい。
―最後に
「しんどさのバトン」は、誰かにパスすればいい。私もカウンセリングでしんどくなったときには誰かに相談する。
しんどい話を聞いた人は、また次の人に聞いてもらう。そうすることがみんなで助け合っていくということにつながる。