NHK大河ドラマ「麒麟がくる」が、きょう7日の放送をもって一時放送を休止することを受け、戦国時代の激戦「丹波攻め」など、明智光秀とゆかりがある兵庫県丹波地域では、毎週の放送を楽しみにしていた人から落胆の声が上がっている。
天正年間、織田信長の命を受けた光秀が、丹波国平定戦「丹波攻め」を繰り広げた。同3年、丹波国に覇を唱えていた赤井(荻野)悪右衛門直正との戦いでは、直正が光秀軍を挟み撃ちにする戦法「赤井の呼び込み戦法」を展開し、光秀は敗走。この作戦は、同県丹波篠山市の八上城主・波多野秀治が赤井方に寝返ったことに起因するともいわれ、直正と秀治との間にかねてからの密約があった可能性もあるという。光秀は同6年、再び黒井城を攻め、直正を病で失っていた赤井方は敗れ、黒井城は落城した。
黒井城跡への登山を日課としている男性(77)は、「放送を楽しみにしているだけに残念。直正が出てきたり、いつも登っている山が映ったらうれしいんだけど」と話す。
丹波市市観光協会長の柳川拓三さん(66)は、「観光面で、大河が放送を休止する影響は大きい」と肩を落とす。これまで同協会主催で市民向けの歴史講座を開くなど、観光客の受け入れ態勢を整えてきたが、「旅行社のツアーに丹波市訪問が組み込まれることが多かったが、コロナの影響で3月からは全てキャンセル」と話した。丹波の味覚がメーンとなる秋に向けても、「秋には来年の大河が話題になっていると思うので、『麒麟がくる』の効果で来丹者が増えるかどうか」と首をかしげている。
一方で、隣の丹波篠山市。波多野秀治のおひざ元「八上城麒麟がくる委員会」委員長の小野健二さん(42)は、「全く問題ない」と前向きな受け止めだ。
「『八上城』と城主の『波多野』の読み方は、ともに濁点のつかない『やかみ』『はたの』だが、間違える人も多く、まだまだ知名度が低い。大河をきっかけにPRのチャンスをいただいていると思っている。たくさんの人が訪れている丹波市の黒井城を“お手本”に、放送が終わってからも来てもらいたい」と力強く話した。
同県丹波市、丹波篠山市などの3府県11市町などでつくる「大河ドラマ『麒麟がくる』推進協議会」はこのほど、当初の予定通り、全44話の放送を求める「お願い文書」をNHKに提出したと発表した。ドラマの舞台が京都丹波に代わっていく期待感、視聴者の関心の高さや反応、NHKへのエールのほか、ゆかりの地として大河ドラマの盛り上げに一層貢献していくことなどを記した。