ツバメのお宿は車庫のなか―。兵庫県丹波市市島町の渕上利治さん(72)宅では毎年、数多くのツバメが飛来し、車庫にずらりと巣を構えている。その数なんと20個。営巣を嫌がる時期もあったが、動物好きの利治さんがシャッターを開放するようになると、「優良物件」と判断したのか、”満員御礼”状態になっている。
約5×6メートルの車庫の梁(はり)に泥と草で造られたおわん型の巣がずらりと並び、昨年までの古い巣も合わせると29個確認できる。5月下旬までに20ほどのつがいが同時に子育てし、1つの巣から5、6羽が巣立ったという。現在は2度目の繁殖期に入ったようで、車庫内ではにぎやかなツバメの乱舞が見られる。
妻の初美さん(71)によると、20年ほど前までは「ご近所さんと同様、巣は2、3個だった」という。当初は車にふんをかけられるし、家も汚れるので、車庫のシャッターを下ろし、寄せ付けないようにしていた。
しかし、動物好きの利治さんが、「締め出すのはかわいそう」と、シャッターを開放。すると、巣が徐々に増え、12年ほど前から今のような状況になったという。
「ここにはヘビもカラスも入って来られないし、夜は親鳥が帰ってきたのを見計らってシャッターを閉めるようにしている。ただ朝、開けるのが遅れると、そりゃうるさいですよ。ツバメのモーニングコールです」と初美さん。
車にはふんよけのブルーシートをかぶせてしのいでいる。繁殖期が終わると、家族総出でふん掃除をするのが年中行事になっている。
初美さんは、「2年前、娘がお婿さんを連れて帰って来てくれた。さらにその娘がこの秋に出産を控えている。ツバメの恩返しかな」と笑っていた。