兵庫県丹波篠山市は今月から、1人の助産師が「My助産師」として、妊娠から出産、育児まで継続して寄り添う妊婦ケア事業を本格スタートした。これまでにもハイリスク妊婦や希望者を対象に取り組んできたが、市内全ての妊産婦に対象を拡大。妊婦健診・出産はかかりつけの医療機関が担い、My助産師は育児相談や保健指導、メンタル面でのサポートを行う。市は、「コロナ禍などで不安を覚える妊婦も多い。どんなことでも気軽に相談してもらい、医療機関と連携しながらお母さんたちを支えたい」と話している。
事業名称は「My助産師ステーション」。市立丹南健康福祉センターにある「子育て世代包括支援センター・ふたば」内に設置した。
担当助産師3人を配置し、母子健康手帳の交付時に妊婦の担当を決定。分娩する医療機関の場所に関係なく、▽交付時の初回相談▽妊娠中期と後期に1回ずつの産前ケア▽産後2週間から1カ月ごろの産後ケアと赤ちゃん訪問―の最低計4回、妊婦と関わる。訪問か、来所かは選べる。
担当助産師が妊産婦と信頼関係を構築しながら、産前産後の体調管理や、食べ物・運動を通した安産に向けての体づくりのほか、「家庭でどんな準備が必要か」「パパはどうやって育児に参加すればいいか」など、時間をかけてあらゆる相談に乗る。
担当するのは助産師歴27年の細見直美さん、同14年の辻井永恵さん、同32年の成瀬郁さん。本格始動前からも含めて、すでに3人で計24人(予定含む)を担当している。
細見さんは、以前は病院の産科外来に勤務。「以前、関わった妊婦さんが出産まで私が担当すると思っておられ、後になって『ずっと関わっていてほしかった』と打ち明けられた。気持ちに気付いてあげられなかったと、2人で泣きました」と言い、「My助産師ならば、切れ目なく妊婦さんに寄り添うことができる。助産師としてもやりがいがあります」とほほ笑む。
以前から「ふたば」担当の助産師だった辻井さんは、「My助産師という言葉は知らなかったけれど、おっぱい相談に来られた方が、『どうしたらいいか分からず、毎日、赤ちゃんと一緒に泣いていた』と言われたことはショックだった。担当助産師として付くことで、退院後のケアに早く、スムーズにつなげることができる。困っているお母さんを一人でも減らしたい」と意気込む。
成瀬さんは、「妊娠中からお母さんとつながっておくことで、どんな話でも打ち明けてもらえる環境をつくることができれば、産後うつを減らすこともできる。『My助産師がいるのが当たり前』という文化をつくりたい」と言い、「全国的に産科の集約化が進んでいるが、どこの医療機関で出産したとしても、地域で支え、女性が輝けるまちにしたい」と話す。
4回のケアの他にも、平日午前8時半―午後5時までは随時、電話や来所による相談を受け付ける。土曜日も予約で対応できる場合がある。
市は、「助産師を中心に保健師とも連携し、チームで妊婦に寄り添う。この事業を”丹波篠山モデル”にし、他の市町村にも広がっていけば」と話している。