震災とのつながり たどりついた「竹」 灯籠づくりで行事支援

2021.01.16
地域

「1・17のつどい」で使用される竹灯籠を製作する職員ら=2021年1月13日午前10時28分、兵庫県丹波篠山市南新町で

1月17日は、阪神・淡路大震災の発生から26年。同じ兵庫県にあって、被害の少なかった丹波地域(丹波市、丹波篠山市)は、震災直後こそ多くの被災地支援を行ってきたが、復興していくまちを間近に見てきたゆえに、「震災を通したつながり」は希薄になっている。そんな中、丹波市教育委員会文化財課と丹波篠山市農都環境課の職員、地域住民らが「阪神・淡路とのつながりを取り戻したい」と一念発起。たどり着いたのは、身近にある「竹」だった。

「たくさんの悲しみがあった震災。時間がたったからといって、何もせずに『1・17』を迎えるのではなく、同じ県民として何かできないか、と考えたのがきっかけです」

丹波市教委文化財課の菊川裕幸さん(31)が言う。震災から26年となり、行政、住民共に「震災」を機にしたつながりはほとんどなくなっている。どのようなつながりができるかと活動を模索する中、京都大学大学院農学研究科に所属し、竹の資源化を研究している菊川さんのもとに地域住民から、「毎年、1月17日に神戸市で開かれている追悼行事で鎮魂の象徴として並べられている竹灯籠が不足している」という情報が寄せられた。

神戸市の東遊園地で実行委員会が開催する「1・17のつどい」では、数千本の竹灯籠を並べ、「1995 1・17」などの文字をかたどってきた。

行事で使用する竹灯籠は関西圏などの市民団体などがボランティアで提供してきたが、高齢化などを理由に数が減少。かつては丹波篠山市内でも住民らが竹を提供していた時期もあったが、現在はほとんど行われていない。コロナ禍によって活動が制限されているため、さらに竹が不足し、今年は紙とキャンドルで作る「紙灯籠」を導入する。

管理されていない竹林面積は年々増加の一途をたどり、景観上の観点からも、竹は“邪魔者”という印象が根強いものの、肥料としての活用など有益な面もある。追悼行事への協力も竹の有効活用になるほか、社会貢献や環境保全、震災の記憶の風化防止にもつながると考え、丹波篠山市内の竹林所有者の協力を得て、両市の職員で竹灯籠を作ることにした。

実行委とも連絡を取り、竹林で伐採した竹を規格(長さ40―60センチ、太さ10センチ、先を45度の角度に切る)に合わせて加工し、竹灯籠30本を製作。実行委に発送した。

竹を提供した竹林所有者の森本宏之さん(78)は、「震災からもう26年。当時の揺れや親戚がいる神戸を心配したことは、今でも強烈に印象に残っている」と言い、「竹灯籠は竹林整備にもつながるし、少しでも追悼の役になってくれるならばうれしい」と笑顔で話した。

菊川さんは、「今回は職員で製作し、数も少なかったけれど、竹林整備は各地で行われているので、整備に合わせて灯籠も作っておくようにすれば住民みんなで行事を支援できる。また子どもたちが取り組むことで防災教育や風化の防止にもなる」と言い、「供給体制が乏しくなる中で、追悼行事で使う竹灯籠の需要は減ってくるかもしれないが、必要とされる限りは今後も続けていけたら。竹を通して阪神間とのつながりをつくっていきたい」と話している。

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