兵庫県丹波市内の山中で、ラン科の希少植物「ウチョウラン」が見つかった。同市内では85年ぶりの確認。兵庫県山岳連盟の常任理事を務める方山文生さん(63)が、トレーニング中に発見した。「相当希少な花であることを知り、公表するべきか悩んだが、コロナ禍の中で少しでも明るいニュースになればと考えた。都会に近い田舎にありながら、貴重な植物が脈々と息づく自然豊かな丹波に改めて誇りを持てる出来事だった」と言い、「他にも宝物がないか、丹波秘境探索を続けたい」とほほ笑んでいる。
環境省の絶滅危惧2類、県では絶滅危惧Aランクに指定され、分布が知られる都道府県のほぼ全てでレッドリストに記載されるほどの希少種。
県立人と自然の博物館(三田市)によると、国内では、本州(関東以西)、四国、九州に分布。県内では阪神、東・西播磨、但馬、丹波で確認されている。しかし、1980年代までに採集された標本が多いため、いずれの場所でも「現状は不明」という。丹波市内では、31年と36年に2地区で自生の記録がある。
山地の湿った岩壁、まれに人家の屋根に生える。茎は小豆大ほどに肥厚した塊根から出て、高さ7―20センチ。葉は長さ7―12センチ、幅3―8ミリの線形で、2―3枚付く。花期は6―8月で、紅紫色の花を数個、一方に傾けて咲かせる。
方山さんが昨年7月、山中でトレーニングをしていた際、岩壁にかれんな花を見た。「最初は変わったスミレかと思った。しかし、よくよく見ると、ただ物ではない雰囲気を漂わせていた」と笑う。
その時に撮影した写真を今年2月、同博物館に持ち込み、同定を依頼。「ウチョウランであるかもしれない」との回答があり、花の咲く時期を待って、今月23日、同博物館の鈴木武研究員と高野温子主任研究員を伴い、現地を訪れた。
岩壁の約50平方メートルの範囲に約200株を確認。ちょうど花の時期を迎えており、ピンク色の小さな花が岩肌をちらちらと彩っていた。