150年ぶり”新”銘柄 享保元年創業の酒造 昔ながらの製法で醸す

2021.06.05
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かつての銘柄「千歳」を復活させた山名社長=2021年5月31日午後3時40分、兵庫県丹波市市島町上田で

1716年(享保元年)創業の山名酒造(兵庫県丹波市市島町、山名洋一朗社長)が、創業時から幕末まで造った銘柄「千歳」を150年以上ぶりに復活させた。当時の醸造方法に近付けた製法を採用し、業界では数少なくなった発酵容器「木桶」を使うほか、醸造用の菌を添加せず、蔵内に存在する菌を取り込む昔ながらの方法で醸す。一方で、当時と現在の技術を融合させた製法でも酒を造る。5日から両製法による計2商品を「千歳」の名で展開する。

高さ、直径ともに2メートルほどある吉野杉の木桶を2つ使用。山名社長(30)によると、現代では金属製のタンクで発酵させるのが主流で、木桶を使う酒蔵は「ほぼない」という。

酒造りでは乳酸菌と酵母菌を添加する一般的な製法「速醸」ではなく、蔵内の菌を自然に取り込む伝統的な方法で醸す。“狙った味”に仕上げやすい金属製タンクでの醸造よりも、仕込みに3倍ほどの時間はかかるものの、まろやかで個性的な味を引き出せるという。

昨年12月、山名社長が12代目蔵元に就任。4年前の帰郷後、新ブランドの立ち上げを念頭に、昔ながらの製法による酒造りに挑もうと、5分の1サイズの木桶で試作を繰り返した。同酒造では木桶による醸造は50年ほど行っておらず、先人の丹波杜氏が残した記録をもとに“再現”を目指した。木は酒を吸う分、仕込み当初より量が減ってしまう「欠減」がある点や、保温効果が高いため温度管理が難しいという課題も乗り越えた。

「千歳」「千歳 ルネサンス」の2シリーズを用意する。酵母菌のみを添加し、昔ながらの製法との融合を図った「千歳」は、県産の酒米・山田錦を使用。いずれの菌も添加せず、自然に菌を取り込む伝統的な方法で仕込む「千歳 ルネサンス」も、山田錦を使う。両シリーズとも、来期以降に違う酒米を使用した新商品を追加する。

山名社長は「弊社は千歳、萬歳、奥丹波と銘柄を展開してきた。千、万、“億”ときて、次は“兆”かなと考えていた」と笑い、「かつての銘柄を復活させることで、丹波の酒造りの文化を伝えていきたい。伝統的な製法と、現代の技術による味も楽しんでもらえれば」と話している。

既存の銘柄「奥丹波」をメインとし、千歳シリーズも通常商品として展開する。「千歳」は720ミリリットル1980円(税込)で販売し、「千歳 ルネサンス」は720ミリリットル1650円(同)、一升瓶3300円(同)。丹波地域の小売店や同社で扱う。

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