江戸時代に書かれた兵庫県の旧氷上郡や多紀郡などの地誌「丹波志」を現代語訳しようと、氷上郷土史研究会(足立義昭会長)が数年をかけたプロジェクトを始める。丹波志は、丹波地域の神社や古城、姓氏、産物、寺院など多岐にわたる項目で書かれており、丹波の歴史を調べる上でよりどころとなる書物だが、原文の写本は伝えられているものの、現代語訳が書かれた書物はない。氷上郡の部の原文と書き下し文、現代語訳を列記し、関連写真などを加えた複数の冊子にまとめる。
講師は、神戸大学地域連携推進室特命准教授の松下正和さん。今年度は神社の部を訳す。
「丹波志」は、1794年(寛政6)に成立。福知山藩士の古川茂正と篠山藩士の永戸貞著が、古い本や伝聞を集め、著した。古川が天田郡(現・京都府福知山市)と氷上郡(現・丹波市)、永戸が多紀郡(現・丹波篠山市)を書いたところで亡くなったため、古川の子の正路が跡を継ぎ、2人の遺稿をまとめた。
写本は多く存在し、丹波市の図書館などにあるのは、京都大学図書館蔵の写本を原文のまま出版したもの。丹波市教育委員会所蔵の写本は1955年、氷上文化協会によって氷上郡の部のみ活字化して出版されたが、現代語訳は書かれていない。今プロジェクトでは市教委所蔵の写本を訳していく。
地域史愛好家ら多くの人が手に取る機会が多いものの、索引がない上に、現代語訳するところから始めなければならず、貴重な資料でありながらも活用しづらかった。同研究会の古文書部会(山内順子代表)が中心になり、一大プロジェクトを進めることにした。
足立会長と山内代表は、「『丹波志』がなければ、今に伝わっていないことは多い。書かれた江戸期はもちろん、古城の項目などは中世のこともよく分かる。かつての丹波を知ろうと思えば、まず当たらなければならない書物。分かりやすく、使いやすい資料としてまとめたい」と話している。
今年度は4回の講座を開き、毎年度5回ずつ開催する。区切りのよいところで冊子にまとめていく。