元読売新聞記者で兵庫県丹波篠山市油井出身の若狭晃さん(90、大阪府堺市在住)が自伝「最後の事件記者 わーさんの生きざま」を自費出版した。事件・犯罪報道に生涯をかけ、現在もフリージャーナリストとして活躍する文字通りの特ダネ記者人生を振り返り、活気を失った近年の新聞の在り方にも警告を発している。
若狭さんは大阪の夕刊紙で次々に特ダネをすっぱ抜き、大阪読売新聞の発刊間もない1959年に同社にスカウトされた。同社社会部で三重県の山岸会事件、名張の毒ぶどう酒事件、大阪の釜ヶ崎暴動、千日デパートビル火災など全国を震撼させるような大事件・事故に遭遇。その都度、社会部長賞や編集局長賞をもらうほどの特ダネを書きまくり、「金の持ち合わせがなくなると賞金稼ぎのつもりで特ダネを仕入れた」ほどだったが、ただ功名を狙うのでなく、千日デパート火災で犠牲になった多くのアルバイトサロンの女性に涙し、社会の底辺に隠された矛盾に憤りの目を向けた。
取材の第一線から退いて社会部デスクになってからも出来るだけ現場に接する姿勢を貫き、サラ金地獄キャンペーンやツチノコの話題作り、交通警官のスキャンダル暴露などで紙面を賑わせた。
神戸支局長時代には、宝塚の小学生誘拐事件で陣頭指揮、報道に携わった記者群像が「誘拐報道」として出版され、ベストセラーに。さらに東映で映画化されて萩原健一、小柳ルミ子らが主演。支局長役の三波伸介に新聞記者独特の言葉づかいや身なりなどを演技指導したことも。
その後、編集局次長や高石工場長なども歴任したが、常に記者精神を忘れずに職務に取り組んで来た。これからの記者像についても「市民に寄り添い、市民の側に立って『新聞は何をめざすのか』を毎日考えながら取材相手に迫ってほしい」と注文をつけている。
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