カレーライスで地域の活性化に貢献しようと、兵庫県丹波市春日町東中にIターンした半農半編集業の夫妻が2月27日、自宅に週末営業のスパイスカレー店をオープンした。自ら栽培するコメの出口にするだけでなく、別の仕事を持ちながら店を開き、地元の人と交流しつつ農村で暮らす生活を実践することを通し、「若い世代に、田舎で暮らし、働くことに目を向けてもらうきっかけになれば」と話している。
「丹波カリィ 食堂東中」が店名。家辺光康さん(63)、安世さん(63)夫妻が営む。編集プロダクション会社を経営しつつ、コシヒカリを60アール、丹波栗を15アール栽培する兼業農家。
知人のつてで買った民家に住んで14年目。家に農地が付いていたため、未経験ながら新規就農。「何にも知らずに失敗続きの私を、近所の皆さんが温かく指導して下さった。買う農機の値段交渉までしてもらった」(光康さん)。おかげで、今では耕作者がいなくなった農地を預かる側になった。
光康さんは、耕作面積が増えたコシヒカリの販路を探していた。コメとの相性を考え、近所のトマト生産者からB級の良品が手に入り、タマネギが栽培でき、地元で鶏肉も調達できることから「スパイス以外は地元食材」の「丹波カリィ」で6次産業化に取り組む。
トマトベースのチキンカレー(1000円・税込み)が定番で、今後、「青菜のグリーンカレー」「白いカレー」「黒いカレー」などを順次、メニューに投入予定。夫婦そろって丹波市丹波栗振興会の会員。丹波栗や黒大豆を使ったスイーツも先々、提供する。
飲食店開業を考えた段階で念頭に置いたのが「地域への恩返し」。地域の一番の悩みの「若い人が少ない」問題に目を向けた。安世さんは、感染症に影響されないライフスタイルを実証し、若い世代に、田舎暮らしに目を向けるきっかけにしてもらいたいと考えた。
「コロナ禍の今だけリモートワークということではなく、農村の地域コミュニティーの中で暮らしながら働くという形を、都会の若い人たちに見てもらいたい。本当に都会にいないとできない仕事なのかを考えてもらって、ダブルワーク、兼業の時代と言われる時代に、仕事の一つを農業にし、田舎で暮らす選択もありなんだ、と提示できれば」と思いを語る。
光康さんは「田舎よりネオンサインが好きな人間だけど、こちらに来て、やりたいことが次々に出てきた。会社は少しずつ縮小し、農業とカフェに力を入れる。カレーは参入しやすいので、既存の飲食店にそれぞれのカレーを作ってもらい、『大丹波カレーラリー』など面で取り組めるイベントができれば、若い世代に訴求できるし、盛り上がる」と夢を描く。
土・日曜のみ営業。午前11時開店。午後2時半ラストオーダー。