兵庫県内では近年見られなかった「コムギ縞萎縮病」の発生が同県南部で確認され、同県病害虫防除所(加西市)は、今年度第1号となる病害虫発生予察特殊報を発表、生産者に注意を呼び掛けている。多発すれば減収の恐れがあるという。同防除所が4月28日に丹波市内の3集落で調査したところ、病気の発生は確認できなかった。同防除所は、「病徴は日平均気温が5度前後ではっきりと現れるが、10度を超えると不鮮明になる。暖かくなるこれからの時期は分かりにくくなるが、(秋に種まきが始まる)次期栽培に向けて意識をしてもらえたら」と話している。
丹波農業改良普及センターや丹波篠山市農都政策課によると、コムギの作付面積は、丹波市は48・6ヘクタール(今年度)、丹波篠山市は1・4ヘクタール(昨年度)。
同防除所によると、3月上旬、県南部のコムギほ場の一部で、茎葉が細長いかすり状に黄化する症状が現れた。そこで検査を行ったところ、「コムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)」を検出した。
同病は、WYMVがコムギの根に寄生することによって起こる。低温の続く年に発生する可能性が高いとされ、感染は5―15度で起こり、冬季に日平均気温10度以下が30―40日間あると発病すると考えられている。県内では1946年に多発した記録がある。北海道や九州などのコムギの一大産地では、よく知られた病気という。品種によって、同病に対する耐病性が異なる。
同病の特徴は、▽発病のひどい部分を中心に同心円状に広がる▽早春から茎葉が黄化し、黄緑色の細長いかすり状の条斑や、新葉に色が抜けたような斑点が生じる▽分げつが減って草丈が低くなり、根の伸びが悪くなる。下葉は黄変して葉先から淡褐色となり、次第に枯れる。症状のひどい株は、茎立ち後に黄化し、枯死する―。
防除対策は、農機具に付着した汚染土が伝染源となるため、▽発病していないほ場から作業を始める▽他のほ場へ移動する際は、農機具(ロータリーなど)の土を十分に落とす―ほか、感染リスクを下げるため、▽11月以降の適期播種もしくは晩播を行い、早播きを避ける▽多発ほ場では抵抗性のある品種への転換を検討する―などを挙げている。