「宝」を栽培 50年小まめに
丹波篠山市内でも有数の黒大豆の産地として知られる川北地区で、約50年にわたって栽培し続けている。2001年度には県内で初めて、地域特産物の栽培に卓越した技能を持ち、継承に取り組む「地域特産物マイスター」に認定された。
篠山農学校(現・篠山産業高)、県農林講習所(現・県農業大学校)で学んだ後、丹波農業協同組合に入組。農業指導で農家のもとへ足を運ぶ中、「人に教えるなら、まずは自分で育てなければ」と、栽培を始めた。
農協や周囲の農家らの手法を「見よう見まね」で試した。良いと感じた手法は積極的に取り入れ、独自に技術を磨いてきた。
現在は150アール(黒大豆と黒枝豆が75アールずつ)で育てている。うねの間隔は160センチ、株の間隔は45センチと、畑を広く使うのが山本さん流。「日当たりと風通しが良くなる」
完熟の牛ふん堆肥を入れ、大麦をまき、5月ごろにすきこんで緑肥にする。6月には苗を定植。その後も、株が倒れるのを防ぐ支柱を立てたり、地温上昇と雑草繁茂を防ぐためにわらを敷いたりと、労を惜しまない。
「手まめ、小まめ、足まめに」がモットー。「昔は湖だったせいか、放っておいても木が育つほど地力が強い」という肥沃な土地の環境と、小まめな世話が結実し、大粒の黒大豆ができる。
同市の黒大豆栽培システムは昨年、日本農業遺産に認定された。毎年、地元の小学生や高校生らに黒大豆栽培を指導している。「丹波篠山にとって、黒大豆は代名詞であり、宝。300年続く栽培の歴史もある。途絶えさせてはいけない」
趣味は野球観戦。根っからの阪神タイガースファン。「今年はあかんなあ」。83歳。