国道429号榎峠バイパス事業(トンネル化)が進められている兵庫県丹波市青垣町の事業地内で、地域住民が希少植物「オカオグルマ」の群落を確認。これを保護していこうとこのほど、地域住民らによって移植作業が行われた。約30人が参加し、専門家の指導のもと、株をスコップで掘り起こし、工事の影響が及ぶことのない、自生地と環境がよく似た場所に移した。参加者たちは、来年の春、この移植先で再び黄色の花をにぎやかに咲かせてくれることを想像しながら作業に汗を流していた。
丹波土木事務所、青垣いきものふれあいの里、県森林動物研究センターの呼び掛けに賛同した自生地付近で暮らす高齢者から幼児までが参加した。
自生地は栗林。トンネル工事に伴い、近くこの場所は資材置き場になる。
同センター職員らが事前に調査したところ、約3000平方メートルのエリアに約200株を確認し、それぞれの株にピンク色のテープを巻いた。
参加者はそれを目印にスコップで周囲の土ごと掘り起こし、30メートルほど離れた山裾の休耕田に約100株を移植した。残りの株はリスク分散を考え、同センターやいきものふれあいの里に移植した。種も保管している。
2人の孫を連れて参加していた足立義光さん(63)は、「昔はそこらへんに生えていたので、まさかこの花が希少種だったなんて思いもしなかった」と驚き、「こうして子どもたちが参加してくれたことで、地域の自然を大切にする思いが未来につながる」とほほ笑んでいた。
オカオグルマは、環境省レッドリストや兵庫県レッドデータブックへの記載はないものの、隣接する京都府ではBランク指定。同センター主任研究員の藤木大介さん(47)は、「丹波地域版レッドデータブックが存在すれば、間違いなく記載される種。市内では2カ所でしか確認していない」と話す。
藤木さんによると、葉がタンポポのように地面に張り付くようにして生育しているため、草刈りの際、刈り払われてしまうことが少ない。むしろ、他の草に負けてしまうので、定期的に草刈りが行われてきたことで生きながらえてきたという。
オカオグルマ(丘小車) キク科の多年草。花期は4―5月。本州、四国、九州に分布し、乾いた日当たりの良い草原に自生する。近縁種にサワオグルマがある。