兵庫県丹波篠山市は産後間もない母親と赤ちゃんを対象に、古民家を活用したゲストハウスを会場にした日帰りの「デイケアサービス」を始めた。自己負担1500円で、育児や授乳の相談から整体、おいしいランチにお昼寝タイムなど、充実した内容。利用した母親からは大好評で、「最高」「久しぶりにゆっくりできた」などの声が上がっており、赤ちゃんと共にのんびり、ゆったりと、心身をリフレッシュしている。
古民家ならではの落ち着いた空間の中で、助産師に抱かれた赤ちゃんがすやすやと眠る。その間、母親は小一時間かけて足先から頭まで全身の整体を受ける。一息ついたところに、旬の野菜を使った、栄養も見栄えも満点のランチが登場。母親同士、談笑しながら舌鼓を打ち、会場に穏やかな笑顔が広がった。
市が6月から市内の助産師に委託して始めた「産後ママのデイケアサービス」。対象は生後5カ月ごろまでの赤ちゃんと母親。近年、古民家を活用したゲストハウスが続々と開業しており、そのうちの「環」と「やまぼうし」を会場にしている。
時間は午前10時―午後4時。問診や赤ちゃんの体重測定を行った後、助産師が授乳や育児について相談に乗るほか、産前産後のケアを専門にする整体師から施術を受ける。ランチ後はゆっくりと体を休めたり、おっぱいケアを受けたりと自由時間。お茶タイムを楽しんで終了となる。
整体や昼寝の間、赤ちゃんは助産師や保育士が見守っており、母親は1人の時間を過ごすことができる。
市の産後ケアは以前から宿泊型と訪問型、日帰りのおっぱい相談があるが、上の子どもがいるなど利用しづらいケースがあることや、「課題がなくても誰もが気軽に心身を休められるケアを」と、新たなサービスを創設した。
このほど「環」で開かれたサービスに参加した女性(32)らは、「ご飯もおいしく、整体まであって最高です」と声を合わせ、「1人で育児をしていると息が詰まることもあるし、立ったまま食事をすることもあるので、とてもリラックスできた。育児について専門的な知識を持った人に相談できる。ママ友もできました」と満面の笑みを浮かべた。
3児の母で、整体師の北村京子さん(44)は、「私も受けたかった」とにっこり。「子育てはずっと走り続けるマラソンと思っているお母さんもいるけれど、一息ついても良いと知ってほしい。同じ境遇の人同士、頑張りを認め合える場にもなる。どんどん利用してほしい」と言い、「私も仕事を通して人の役に立ててうれしい」と喜んだ。
母親の多くが、同市が全国で初めて自治体レベルで導入し、希望する市内全ての妊産婦に1人の助産師が継続的に寄り添いながら出産・育児に伴走する「My助産師制度」を利用している。助産師とは妊娠中からの顔見知りのため、気兼ねなくサービスを受けることができる。
また、北村さんらのように、母親として制度を利用したことがきっかけで事業に加わるなど、My助産師制度を通した人の輪が広がっている。
担当する助産師の成瀬郁さん(55)は、「産後ケアは不安がある人が利用するのではなく、初産婦も経産婦さんも、全てのお母さんが利用していいものだと知ってもらえれば」と呼び掛けている。
利用日数の上限は2日。1回の定員は2、3組。