飲めば長寿に?「狸穴命水」 弘法大師にまつわる清水

2022.11.14
たんばの世間遺産地域歴史

弘法大師像が立つ「狸穴命水」の取水口=兵庫県丹波市市島町上鴨阪で

当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波市市島町鴨阪自治会にある弘法大師ゆかりの清水「狸穴命水」です。

長寿の水とされる、同町の五台山の中腹から湧き出る「狸穴(たぬきあな)命水」。弘法大師にまつわる水で、麓にある取水口には大師の石像が立てられている。

地元に伝わる由来によると、大師が布教の途中で鴨阪を訪れた際、日照り続きで喉が渇き、疲れ切っていたところに老婆が飲み水を分け与えてくれたという。蘇生した大師は、山越えの途中に鴨阪の方向を振り返り、感謝の思いで手に持った杖を立てて祈ったところ、そこから清水が湧き出したと伝わっている。

毎年5月21日、取水口を管理する鴨阪自治会の和光会(余田義信会長)が現地で大師祭りを開いている。同会は1999年(平成11)、台座を含めると3メートル以上になる大師像を立てた。

取水口には絶えず水が流れている

余田会長(73)によると、今の取水口ができるまでは、中腹にある源流付近まで水をくみに行っていたという。「人生の最期を迎えようとしている人が、この水を飲みたいと求めたことがあったと聞いている」と話す。

2014年に発生した豪雨災害時には、取水口一帯が土砂崩れにより埋まってしまったが、水が枯れることはなかったという。水温は一年を通じて17度ほどあり、炊飯やコーヒー、水割りなどに使用するため、他地域から水をくみに訪れる人も多いという。

立像の台座には、「ありがたや 五台の山の 岩かげに 大師の恵み とわにあふるる」と歌が刻まれている。余田会長は「大師祭りでは、お経の最後に、この歌を3度唱えるのが恒例。地域を潤してくれる水です」と話している。

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