来年3月5日に兵庫県丹波篠山市内で開かれる「第43回丹波篠山ABCマラソン」の応募者数が伸び悩んでいる。締め切りが今月20日に迫る中、4000人の定員に対して、現在、約2200人にとどまっており、事務局は2次募集も検討中。同大会は開催費用の大半を参加費でまかなっており、定員に満たない場合は補填が必要となるが、酒井隆明市長は取材に対し、「大幅に費用が足りない場合は、協賛を呼び掛けるなど対策を考える」とし、「まずは期限を延期してでも応募が増えるよう努力するが、こちらの都合で『定員に達しなかったので中止する』では、申し込んでくださった人への裏切りになる。中止はあり得ない」と開催を強調した。
コロナ禍での中止やオンライン開催を経て、例年の定員1万人から4000人に縮小しながらも、4年ぶりの通常開催を決め、市民以外の一般ランナーの受け付けを11月7日から開始。当初は800人ほどが申し込むなど勢いが見られたが、その後は低調となっている。
今年は全国各地の大会が同様の傾向。事務局の市教育委員会は、全体的に応募が低調な理由の一つを、「どの大会も参加費が高いと感じられている」とする。
ABCマラソンの場合、コロナ前最後の通常開催だった2019年の大会は参加費5800円、20年の大会(後に中止)は6500円。感染拡大防止のために定員を4000人にした22年の大会(同)から1万2000円と倍近くになった。
その理由は、「1万人でも4000人でも感染対策や警備などの経費は同じ。また、費用のほとんどを参加費でまかなっているため、定員が減ると参加費も上がってしまう」と説明する。
23年の大会の事業費は約6000万円。1万2000円の参加費で定員が埋まった場合、総額は4800万円となり、参加費が80%を占める。残りはこれまでの大会の繰越金と市の助成を充てる。仮に6500円で実施すれば、2600万円と全体の43%にしか届かない。
ただ、23年と定員、参加費とも同じだった22年の大会は、受け付け開始後すぐに約3000人が申し込み、2週間ほどで定員に達していた。
費用以外にも、▽ABCも含めて直前で中止になった大会があったことから、今回も同様になる可能性があると不安視されている▽同時期に開催される都市型マラソンも定員割れになっているため、ABCにランナーが流れてこない▽一時のマラソンブームの熱が冷めつつある―などと推測している。
また、制限時間が約5時間と他大会と比較して厳しい大会として知られていることから、「コロナ禍で久しく大会に出場しておらず、ハードルが高い」という意見もあるといい、ランナーの練習不足や大会に出る習慣がなくなっていることも大きいと考えられるという。
同大会は関西では老舗の大会で、田園風景と地元住民らによるもてなしが好評を博してきた。コロナ前には受け付け開始から数時間で定員の1万人に達したこともある。
今回は10月の実行委員会で規模を縮小しての開催を決定。コロナによる緊急事態宣言などが発せられた場合や、医療体制がひっ迫している場合は中止すると決めていた。
酒井市長は、「少なくとも今、定員の半分以上の人が応募してくださっており、コロナの影響によるもの以外での中止は考えられない」とし、「今は多くの人にエントリーしてもらえるよう、最大限の努力をするのみ。ぜひ参加を検討してもらいたい」と呼び掛けている。