当たり前にありすぎるけれど、住民が大切にしていきたいもの「世間遺産」―。丹波新聞では、兵庫県丹波地域の人や物、景色など、住民が思う”まちの世間遺産”を連載で紹介していきます。今回は丹波篠山市福住上地区にある、こんもりとした形が特徴的な「船岡山」です。
約80段の急な階段を上ると、頂上に丸山神社が鎮座している。地元住民にとって、心の支えであり、遊び場でもある、思い出の詰まった場所だ。
高さ30メートルほど。スギやヒノキ、クヌギ、竹などが林立している。丸山神社には、五穀豊穣や家内安全などの御利益があるとされる伏見稲荷大社(京都市伏見区)の分霊が祭られている。麓には船岡地蔵尊があり、木札には「丸山のふもとに道をつけ行けば 里守る地蔵あらわれにけり」という御詠歌が書かれている。
降矢哲二さん(91)によると、40年ほど前までは毎年8月24日に地蔵盆が行われ、老若男女が浴衣姿で盆踊りを楽しんだという。福住まちなみ保存会の森田忠会長(70)は「中学時代はバレー部の練習で、蛙跳びで頂上を目指した。デートスポットにもなっていた」と話す。
2007年度には福住上地区が県から助成を受け、登山道を整備。頂上の神社のそばには「丸山亭」と名付けた東屋を建てた。
哲二さんの妻、千弘さん(83)は「『家族が機嫌よくいられるように』と365日、地蔵を参っている。同じように毎日参っている人が5、6人はいる」とにっこり。哲二さんは「子どもの頃からの遊び場。よくかくれんぼをした。この山に育ててもらった」としみじみと話した。