「もうかる栗」で夢を 「反30万円実現可能」 ”高級ブランド”の産地

2023.02.18
地域

丹波栗っ子会の山本浩子さんは、SNSでリアルタイムの栽培相談など、女性組織の取り組みを発表した=兵庫県丹波市市島町上田で

高級ブランドとして名高い丹波栗の産地、兵庫県丹波市で13年ぶりに「災害から復興した丹波/産地を支える女性の力」をテーマにした「県くり研究大会」(県、市丹波栗振興会など主催)が開かれた。座学のほか、ほ場で実地研修をし、夢のある「もうかるクリ栽培」について理解を深めた。

県農林水産技術総合センターの木谷徹専門技術員は、センターで試験栽培した「銀寄」7本の4年間の平均収量を41・4キロ、樹冠占有面積(枝を伸ばしたときに1本の木が占める面積)を79・3平方メートルと紹介。この程度の木が1反に10本あれば、400キロ以上収穫できるとし、販売価格をキロ1000円と設定し試算。「実現可能な努力目標」と前置きし、「経費を引いても、10アール当たり30万円強、1ヘクタールで300万円強の所得。クリは所得を上げる可能性がある」と力説した。

また、日本のクリの在来品種は、丹波地域由来と、それ以外に分けられるとし、丹波地域の在来種が他の地方に伝播し、地方品種の成長に役立っており、丹波栗は歴史的にも品種的にも重要と説いた。

県全体では面積の減少、収量減少、品質の低下が見られる中で、丹波は頑張っているとし、所得を確保し、新たな担い手を増やし、技術を伝承するシステムをつくり、クリ栽培の歴史や培った技術と、技術に裏付けられたブランドを次世代につなぐよう促した。

丹波市の女性丹波栗栽培グループ「丹波栗っ子会」の山本浩子代表は、交流サイト(SNS)で栽培相談を行い、ほ場で写した虫の写真をSNSで共有し、対処法を即座に先輩に質問するなど、独自の取り組みを紹介した。

また、同会が、仕事を持つ現役世代に技術を伝えるため、研修会を出席しやすい土、日曜開催にしたことで、他の丹波栗生産組織の研修会も土日に開催する好影響を与え、若い会員へ技術継承がされやすくなったことなどを報告。会員は発足時の7人から22人に増え、今後は女性の剪定組織をつくり、クリ栽培の活性化に貢献したい思いを語った。

今中栗部会のほ場を現地視察し、垣田部会長(右端)から説明を聞く参加者たち=兵庫県丹波市市島町上竹田で

2014年の豪雨災害後に山林土砂で農地が埋まった同市市島町の今中栗部会のほ場(約2ヘクタール)の視察では、垣田善尉部会長の説明を聞いた。

垣田部会長は、災害残土で土地を最大10メートルほどかさ上げした所にクリが植わっていることや、整地の段階で土壌が強いアルカリ性に傾き、655本植えたうちの半数近くが枯死したため、部会員で植え直したこと、今も土壌改良を続けていることなど栽培の苦労を紹介。その上で、「部会員は手弁当で、草刈り機のガソリン代も持ち出しで、毎月作業をしている。自分たちの次の代につなぎ、次の世代の農業収入になれば、私たちが苦労したかいがある」と熱い思いを語った。

また、市丹波栗振興会副会長の由良和宏さんのほ場も見学し、的確な栽培管理で大粒の生産を続ける栽培努力を聞いた。

研修会には、丹波地域のほか、「播磨風土記」にクリに関する記述があり、次年度から産地復活に挑戦する同県赤穂市や、道の駅能勢「くりの郷」がある、大阪府能勢町の生産者らも参加した。

足立義郎・丹波市丹波栗振興会長は「丹波市は振興会員が増える一方。『ここでは、栗が動いている』と感じてもらえたと思う。切磋琢磨し、より高品質のクリを多く栽培し、産地としての名声をさらに高めたい」と、いっそうの奮起を誓っていた。

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