100年前の商店街を地図で復元―。兵庫県丹波市春日町黒井地区自治協議会が主催する、地域の歴史を楽しく学ぶ講座「歴楽KUROI」がこのほど同市内であり、明治後期から大正中期に配られたと考えられるチラシに載った地元商店の位置を、現在の住宅地図に反映させるワークショップがあった。今なお存在している店舗もあって参加者の関心を引いたほか、昭和初期の商店街を知る参加者が往時の様子を語るなどし、和気あいあいとした雰囲気でかつての商店街に思いをはせた。
「黒井實業特別大勉強團(くろいじつぎょうとくべつだいべんきょうだん)」とタイトルが付けられた、A3サイズほどのカラーチラシ。計52の店や旅館、銀行などの広告がぎっしりと掲載されている。地域の人が保管していた。
呉服関係が8軒と最も多く、旅館と薬店が5軒ずつ、魚屋が4軒と続く。薬店の中には、「赤井直政公伝来」とうたった広告もあり、戦国時代に明智光秀を破った地元の黒井城主・赤井直正になぞらえたものもある。
同講座で講師を務める山内順子さん(市文化財保護審議会委員)の解説で、とりわけ参加者の興味を引いたのが、「絲屋」「黒井」の2つの銀行。山内さんは、「絲屋」は1895年(明治28)設立の個人銀行で、のちに黒井から北海道に拠点を移し、1926年(大正15)に休業して北海道拓殖銀行が継承したと紹介した。
ワークショップでは、チラシから広告を切り抜き、参加者同士で相談しながら地図に落とし込んだ。2月の同講座で52のうち39店舗は場所を特定していたが、分からなかった残りを想像した。
同商店街で生まれ育った95歳の女性を中心に輪ができ、往時の様子を教えてもらいながら、新たに4店舗の場所を特定した。女性は「昔のことを思い出すと、父や母が頭に浮かんだ」とほほ笑み、「楽しい時間でした」と話していた。
チラシは何を目的にしたものかは不明だが、地元商店の広告が一枚に載っていることから、同商店街の共同大売出しの一大イベント「『誓文(せいもん)払い』のチラシでは」との声も上がっていた。