兵庫県丹波市柏原町田路の青果店「ほんきん」(藤田豊久さん、潤子さん経営)が先月20日で閉店し、先々代から数えて95年の歴史に幕を下ろした。潤子さん(71)の祖父が同市氷上町本郷で50年余り食料品店を営み、1981年に現在地に店舗を移して41年になる。新鮮な果物の販売や卸、葬儀の盛籠なども扱い、多くの客が訪れていたが、年齢などを理由に閉店を決めた。藤田さん夫妻=同町本郷=は、「長い間、お引き立ていただいたお客さまに感謝しています」と話している。
潤子さんの祖父・金次さんが営んでいた「藤田食料品店」がルーツ。父の隆男さんが現在地に店を移し、創業地と金次さんの名から「ほんきん」と店名を改めた。
当時は隆男さんと潤子さんの親子2人で切り盛りし、数年後に豊久さん(78)も加わった。潤子さんは「移転当時は周りに何もなくて、まさに”ぽつんと一軒家”状態。遠くの方まで見渡せた」と笑う。
葬儀の際などに供えられる盛籠は需要があり、多いときで1軒から30個の注文があったことも。パンや弁当を置いていた時期は、午後9時半まで営業していたこともあり、勤める人が夜食にと買い求めたという。
時代とともに大型スーパーやコンビニなどができて客の流れが変わり、次第に閉店を考えるようになったという。2人は「祖父からの店。閉じるのも忍びなく思っていたが、ここらへんが潮時かなと思った」と話す。
年中無休で営業し、走り続けてきた。一番の思い出は「多くのお客さんに来ていただき、喜んでもらえたこと」と声をそろえる。潤子さんは「毎日来ていたので、閉店すると気持ちが抜けたようになるかも」、豊久さんは「とにかく忙しかった。これからは旅行に行ったり、ゆっくりしたりしようかな」と話している。