兵庫県丹波市の版画家、堂東由佳さん(39)が、同県西脇市の岡之山美術館で、シルクスクリーン作品を中心とした個展「堂東由佳展」を開いている。かわいらしくもあり、不気味でもあるキャラクターのような小さなドローイングを再構成、配置し、パターンを反復、密集させて創作している。意図せぬ物語が作品のそこかしこで生まれる面白さがあり、「自分だけのお気に入り、自分だけのストーリーを見つけて」と来場を呼びかけている。7月2日まで。
京都市立芸術大学卒、同大学院修了。これまで京都市で活動することが多く、県内で個展を開くのは初めて。2009―23年に制作した19点を出展している。
A4の紙に0・25ミリのペンで、目の前にあるもの、頭に浮かんだものを思いつくままに描く。1―2センチほどの小さな線画で用紙を埋め尽くす。これをスキャンしデータ化して編集。大きなものでは60×100センチの作品に仕上げる。同じデータを一つの作品で繰り返し使ったり、別の作品データを上から重ねたりすることで、「偶然の物語」が作品の中に生まれる。離れて作品を見ると、模様のようで、近寄って目を凝らすと、動物であったり、静物であったり、モチーフを発見できる。
子どもの頃から小さな絵を描くのが好きだった。中学校の美術部では、「ウォーリーを探せ!」のような細かい絵を描いた。母校の柏原高校では、受験のために美術部に入り、デッサンを学びつつ油彩画を描いた。浪人生活を経て、京都市立芸術大学に合格。浪人中に徹底的に絵を描いたことで、絵と向き合うだけの制作から距離を置きたくなり、版を作り、刷る「作業」を伴う版画に進んだ。
「子ども時分と変わらず、今も細かい絵を描いている。ずっと一緒。自分ができることが版画で、シルクスクリーンの工程は、自分にとって半分遊んでいるような要素もある」と言う。
柏原高校で非常勤講師として週3日、美術を教えるほか、嵯峨美術大(京都市)、四条畷学園(大東市)の非常勤講師を務めている。生活の空いた時間で制作を続けている。
2018年の東京国際ミニプリント・トリエンナーレ審査員賞ほか、受賞歴多数。昨年「丹波篠山まちなみアートフェス」、今年1―2月、京都文化博物館(京都市)で開かれた「京都府新鋭選抜展」に出展した。
午前10時―午後5時。最終日のみ午後1時。