恵みの秋を迎えつつあるが、農村にとっては〝祭りの秋〟でもある。今年はコロナ禍で神事のみや規模を縮小していた各地の祭りがどうなるのかが気になるところだが、そもそも人口減少の中でみこしの担ぎ手などの「人手不足」が大きな課題となっている。コロナ禍を機に現状に即した形に縮小していくことも手だが、一方で「関係人口」をはじめとるする外部の人の力を借りるという方法もある。
兵庫県丹波篠山市畑宮の佐佐婆神社で10月7、8日に営まれる例祭「はた祭り」の実行委員会は今月22日まで、山車の引き手やみこしの担ぎ手など外部からの人手を募集している。関係者は、「4年ぶりで地元も祭りの継承が難しい上に人手不足。ぜひ協力してほしい」と呼びかける。
参加無料で誰でも可。山車やみこしに関わる人は18歳以上で、法被や手ぬぐいは貸し出し、食事も提供する。7日の宵宮は20人、8日の本宮は30人を募っている。
篠山地方三大祭の一つに数えられるはた祭りは、400年近い伝統を誇り、山車やみこしが巡行し、秋の農村風景を雅やかに彩る。宵宮ではちょうちんで飾られた山車が幻想的な空間を演出し、本宮では市内では珍しい流鏑馬が奉納される。
しかし、近年の過疎化や少子高齢化に伴い、今年、氏子10集落に伝わる10基の山車は8か9基に、7基ある太鼓みこしは1基のみになる見込み。十数年前には山車は全基、太鼓みこしは3、4基巡行しており、人手不足が顕著になっている。
神戸大学の授業「実践農学入門」で、同地区で学生を受け入れたことを機に、2011年から学生らが参加するようになり、12年には学生サークル「はたもり」も結成され、多い時で30人以上が継承の一端を担った。
芽生えつつあった外部からの力の供給が途切れたのはコロナ禍。3年間、神事のみになり、サークルに所属していた学生は卒業して社会人になり、つながりが希薄になりつつある。
4年ぶりに祭りを営むことが決まり、継承していくに当たって再度、外部の力を呼び込もうと計画。昨年、市ブランド戦略課内に開設され、外部の力を借りたい地域と、地域に関わりたい外部の人をマッチングし、関係人口の力を地域につなぐ「丹波篠山つながり案内所」も協力し、人手を募集することになった。
はた祭り実行委員長の岡本常博さん(72)は、「これまであったつながりもコロナ禍の間になくなってしまったケースもある。過疎化で本当に難しい状況だけれど、お手伝いしてくださる方がおられたらうれしい」。神戸大出身で、学生時代からはた祭りに参加し、現在も関わる菅原将太さん(30)は、「外から見るだけよりも、祭りに参加して皆さんと汗を流すことで地域のことがよく分かるし、400年という歴史の重みも感じられる」と呼びかける。
参加希望者は同案内所へ。
◆受け入れ側は意見まとめて
地域の祭りの維持を重要視しているという同案内所によると、今年は福住地区・住吉神社の水無月祭、日置地区・波々伯部神社の祇園祭に外部の人が携わった。いずれも丹波篠山をフィールドに活動などを行っている神戸大学と関西国際大学の学生らで、山車の引き手やみこしの担ぎ手を務め、「ある集落では地元の人が3人ほどで、外部の人の方が多い場面もあった」という。
それほどに過疎化の影響は地域の大切な祭りに暗い影を落としており、現状を維持するならば、外部の力を借りることは今後も必要になってくる。
祇園祭に携わった市農都環境政策官で、元神戸大学の清水夏樹さんは、「どこも人手が足りず、困っておられる。ただ、祭りは地域の人にとってのアイデンティティーであり、そこに外の人が来ることになる。受け入れる際は、地域側も外の側もきちんと意見をまとめ、お互いが参加して良かったと思えるようにする必要がある」と投げかけている。