「道切り開く『学力』を」
地元に根差し、創業から50周年を迎えた学習塾「学窓社ゼミ」(丹波篠山市立町)の塾長。40年の講師人生で指導した生徒は数千人に上り、「生徒たちに育ててもらった。これからも子どもたちが自分で道を切り開いていけるよう、若い大学生の講師とも一緒にサポートしていきたい」と語る。
自身も小学6年生の時に入塾。大学時代には講師のアルバイトも経験した。国文学者になるために大学院に進もうかと迷っていた時、前塾長から「4月から授業(の枠を)用意しているから」と言われ、「迷いが吹っ切れた。教えて、分かった時に子どもたちが本当にうれしそうな顔をする。それが楽しかった」。
塾と言えば「受験」というイメージがあるが、「他にやりたいことがあれば進学する必要はない。けれど、学力は『選択肢を広げる力』。高校以上は、『その学力ならここか、ここ』と、選択肢が限られてしまう。学力は手段であって、子どもたちが自分で選択肢を選べるようにしてあげることが大切だと思う」と話す。
ただ、選択肢を探そうにも地方では情報量が少ないことを課題と感じており、関西や東京方面の大学見学に出向く企画も開催。出身の大学生に講師を担ってもらい、勉強だけでなくリアルな情報を伝えて、やる気やモチベーションを維持することにも気を配っている。
「教えた子の中には志のある教員や塾講師になった子もいる。教えたことがきっかけで道を選び、また、次の世代に教えてくれる。それがこの上なくうれしい」
趣味は観世流能楽。師のもとで稽古に励み、「教えると教わるのバランスが取れているのかも」と笑う。60歳。