紅葉にはまだ早い10月、兵庫県丹波市柏原町の城下町に連日、大型バスで観光客が訪れている。丹波市観光協会の仕掛けがはまり、旅行社のツアーに「丹波柏原」が組み込まれ、これまでなかった人の流れが生まれている。ほとんどが初めての来訪者。丹波篠山市の隣にある、歴史ある町を「新発見」した人たちにファンになってもらおうと、案内役の観光ボランティアガイドも連日、案内に精を出している。
個人客は増えているが、団体客が少ないことを課題とみた同協会が6月27日、旅行を企画する業者向けモニターバスツアーを実施。二十数社が参加したツアーで、柏原城下町、高源寺(青垣)、道の駅丹波おばあちゃんの里(春日)、ゆめの樹(同)、山名酒造(市島)を案内した。
連日訪れるバスは、読売旅行「丹波秋の大収穫祭」ツアー。9月30日―11月5日に延べ68台が訪れる。午前中に大内農場(丹波篠山市)で土産付き黒枝豆収穫体験をし、レストラン「ささやま玉水」(同)で昼食、篠山城下町を散策後、「丹波柏原」へ。木の根橋、柏原八幡宮、太鼓やぐらを1時間散策し、道の駅丹波おばあちゃんの里で買い物をして帰途につく日帰り旅行。
これまで丹波市外だった立ち寄りスポットが「丹波柏原」に振り替わった。バスガイドがコロナ禍で減っており、ガイドクラブの案内があるのは旅行社の大きな助けになる。
丹波柏原ふるさとガイドクラブ(13人)の竹内脩会長(81)は、読売旅行だけで2500人超を案内し、これまでにない忙しさを経験している。「織田家ゆかりの土地が丹波篠山市の隣にあると、全く知られていないことが分かった。樹齢1000年の大ケヤキも喜ばれている。静かな落ち着いた雰囲気で、とても良いと言われる」と好感触を感じている。滞在時間の都合で柏原藩陣屋跡は案内できておらず、「柏原を再訪してもらいたいし、丹波市内をあちこち観光してもらえるよう『もみじめぐり』のパンフレットも配り、宣伝している」。
旅行業界45年の経験を生かし、丹波市観光協会観光戦略室長に今春就任した中野浩明さん(68)=春日町古河=は、「丹波篠山市は観光客で飽和している。観光客は新しさを求めていて、旅行業者は新しい立ち寄りスポットを求めている。丹波市は大きな可能性を秘めている」と自信を深めている。
6月にモニターツアーを開いたのも、秋のツアー販売に間に合わせるための布石。「紅葉のシーズンも、これまで以上に観光客が増えると期待している」と静かにほほ笑んだ。