存在感増すデジタル地域通貨 ポイントに差、小型店へ誘導 物価高で市民「助かる」

2023.11.13
ニュース丹波市地域地域注目

たんば商業協同組合の窓口で、チーカアプリの使い方を尋ねる市民=兵庫県丹波市柏原町母坪、コモーレ丹波の森で

兵庫県丹波市のたんば商業協同組合(畑道雄理事長)が発行するデジタル地域通貨「たんばコイン」の存在感が市内で高まっている。「市内応援店舗」(小型店)でポイント還元率を上乗せする制度の導入により、小型店での利用が増加。今年度のプレミアムコインの場合、最大で8300円、27・6%“得”することや、同居・扶養の家族分を一端末でまとめて購入できるようにしたことにより、物価高の折、市民から「使いやすく助かる」との声が寄せられているという。

たんばコインは、地域通貨プラットフォームサービス「chiica(チーカ)」を使用し、同組合が2019年に運用をスタート。チーカのアプリをダウンロードして使用する。スマホを持っていない人などには個々の会員番号付きカードを発行し、カードにチャージできるようにしている。

購入額に一定額を上乗せして買い物ができる“お得”な「プレミアムたんばコイン」は、丹波市が同組合に補助金を出して、翌20年度から運営している。今年度は、プレミアムコイン発行支援事業として、約1億1450万円を予算計上している。国から市への交付金が還元分の原資だ。

同組合と市の協議により、還元率や購入上限額などを毎回変更。今年度はプレミアム率10%、購入上限額1人3万円に設定している。今年度のプレミアムコインの販売総額は4億9500万円で、昨年度の2億3400万円から大幅に増額した。プレミアム率は20%から10%に下げ、セット数を6500セットから1万5000セットに増やした。

さらに10%還元で小型店へ誘導

紙の「商品券」とデジタル地域通貨「たんばコイン」の店舗規模別使用率(いずれもプレミアム分)

同組合が1999年から発行してきた共通商品券は、大・中型店で多く使われる傾向があり、地域の小型店への還元が課題になっていた。デジタル通貨のたんばコインは、店舗を指定してポイント還元をする設定が可能だったため、20年度から、小型店では使用時にさらに10%即時還元する仕組みにしたところ、小型店での使用が大・中型店を上回った=表参照=。畑理事長は「10%の効果を実感した」と言い、市商工振興課の本庄ななみ係長は「小規模店舗で使うメリットが浸透してきた」と手応えを感じている。

このほかにも、販売開始から約2カ月の期限内に2万円分のプレミアムコインを小型店で使用すると、2000円分のポイントが還元される特典や、来年2月29日までの有効期限内であれば、通常の「たんばコイン」の利用でも、小型店で10%のポイントが還元される。1つの端末でプレミアムコインを3万円分買った場合、期間内に全額小型店で使ったときに“お得度”が最大になる(3000円=上乗せ+3300円=還元+2000円=還元)。

大型店の参加増「動き見守る」

現在、たんばコインが使えるのは265店舗。うち、10%上乗せ還元がある小型店は223店舗。業種は飲食、物販、自動車、理美容、薬局、ガソリンスタンドなど多岐にわたる。利用可能な店は、20年度と比べて52店舗増えた。

大・中型店舗は、昨年度は19店舗だったが、今年度は「物価高対策」が目的のため、これまで利用できなかった店にも参加を呼びかけ、34店舗に増えた。これまでのところ、昨年度より小型店での利用割合がやや減っており、畑理事長は「今後の動きを見守っている」としている。

デジタルの強みで迅速対応とコスト減

今年度から、家族分(最大5人まで)をまとめて購入できるようになったことで、家計を預かる人のスマホに一括してチャージできるようになり、使いやすさが向上した。市内の子育て中の女性(47)は、夫と子ども1人の3人分のプレミアムコインを自分の端末に購入。「夫はチャージを面倒がるし、子どもはスマホを持っていないので助かった」と話す。

プレミアム付きの共通商品券については、今年度から紙の発行をやめ、たんばコインに一本化した。市は、「デジタル通貨は、紙に比べて迅速な対応ができ、印刷、引換券郵送などの経費がかからないなど、メリットが大きい」と話す。

畑理事長は「物価高で、消費者だけでなく、地域の事業者もあおりを受けている。使い方の相談も受けているので、安心して使ってもらえたら」と話している。

 

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