趣味のものづくりを通じて、人生を豊かにし、人とのつながりを深めている人たちがいる。剣道のミニチュアグッズを制作している兵庫県丹波市氷上町の山本喜久さん(73)を取材した。
剣道のミニチュアグッズを作り続けて約40年。身近な素材を使い、ミニチュアの竹刀や胴、ユニークな“カエル剣士”などさまざまなバリエーションを制作。丹波市内を中心に、剣道教室の子どもたちや指導者らにプレゼントしている。
小さい頃から物を作ったり絵を描いたりするのが好きで、仕事は水道・設備業。30歳代の頃、氷上町にあった筆の製造工場で、たくさんの筆の柄が廃棄されているのを見て、「もったいない」と思い、譲ってもらって「ミニ竹刀」を作ったのが剣道グッズ制作の始まりだった。筆の柄が入手できなくなったため、今は「祝箸」でミニ竹刀を制作している。
32歳の時、高校時代に取り組んでいた剣道を再開した。父親が倒れて気が滅入り、「大きい声を出したい」と氷上錬成会の練習に参加。ほどなく指導を頼まれ、昨年10月まで子どもたちを教えた。
ミニ竹刀は当初、自分の教室の子どもたちにあげていたが、剣士が減ったこともあり、市内全体に対象を広げた。多いときにはミニ竹刀を100本ほど作った年もあったという。稽古始めなどの機会にプレゼントしたり、大会入賞者の“副賞”として活用されたりしている。「作ったら全部子どもにあげている。もらって驚く顔を見るのが楽しみ」とほほ笑む。
また、丹波市剣道連盟の仲間たちにも、昇段の際などに“胴セット”などをプレゼント。「『胴』は一番おしゃれができるところ」と言い、塩ビパイプ製のミニ胴も、金色などの彩色を施し、立派に仕上げている。
使えなくなった竹刀を解体して、面金(めんがね)の間から顔をかく道具や、昆虫のオブジェを作ることも。今でいうSDGs(持続可能な開発目標)の精神にあふれている。
心臓の病気を患い、手術をして以来、激しい運動があまりできなくなったが、「道場にいるのが好き」と剣道への愛情は変わらない。ユニークなミニチュアグッズで、子どもたちや仲間を応援している。