誰もが安全に暮らせるまちに―。兵庫県丹波市の平均高齢化率(35・5%、今年1月末時点)を上回る青垣町芦田(41・7%)、春日町春日部(38%)の2地区で、病気で搬送されるなど「もしも」のときに、駆け付けた救急隊や警察、近隣住民らが即座に対応できるよう、身元や緊急連絡先などをあらかじめ記入しておくカードが全戸配布された。配布した両地区の自治振興会、自治協議会の役員らは「この取り組みが市全域に広がっていけば」と願う。
◆少子高齢化対応の地域活動 「話のタネにも」
芦田自治振興会(足立秀一会長)は昨年10月、「芦田あんしんカード」(A4サイズ)を全約500戸に配布した。家族の名前や生年月日、持病、血液型、携帯番号のほか、親戚や親きょうだいらの緊急連絡先が記せる。
目に付きやすい冷蔵庫に貼れるマグネットと、中身が他人に見えないよう四つ折りにしたカードを収納できる透明なケースも一緒に配った。
地域で元気に楽しく住み続けられることを目指して策定した「芦田支え合い推進計画」の取り組みの一環。同自治振興会や市、市社会福祉協議会のメンバーらで少子高齢化社会に対応した地域づくり活動を話し合った。
「とにかく住民の安心につながれば」と足立会長(73)。「能登半島地震でも、近所の人と助け合ったおかげで津波から逃げられたという話を聞いた。何かあったときのために、普段のコミュニケーションが大事」と話し、「あんしんカードが『あんたんとこもしとってか』という話のタネにもなる」と期待する。
◆住民の声を形に 地域の細かな問題解決へ
春日部地区自治協議会(笹川一太郎会長)は、毎月発行する広報紙「こみにぺえじ」(A4サイズ)の今年1月号の裏面を「わたしのカード」とし、全約650戸に配った。紙面をピンク色にし、目立つように工夫。身元や緊急連絡先に加え、かかりつけの医療機関や常用薬、アレルギーなどを記す欄も設けた。
芦田地区の取り組みを市の広報紙で知った住民からの「こんなんあったらええな」という声を受け、同地区のカードを参考にしながら形にした。
春日部地区では、独居住民も増えているといい、同自治協議会は、死後に備える「終活」に関するセミナーなどを定期的に開いている。
事務局担当者は「行政ではできない地域の細かい問題を把握し、少しでも解決につなげていきたい」と話している。