市民参画の公演”継承”へ 運営経験者で法人設立 柔軟な企画や裏方育成に

2024.04.29
地域注目

今年度、市内の文化ホールの運営委託を受けた一般社団法人「ネクストゼロ」のメンバー=兵庫県丹波市市島町上田で

兵庫県丹波市内の文化ホール(ライフピアいちじま、春日文化ホール)を会場に、市民が出演から裏方まで関わる市民参画型の公演運営を次代につなごうと、ホール運営の経験者らで一般社団法人「ネクストゼロ」(同市市島町上田)を立ち上げ、今年度、市から運営委託を受けた。市民のニーズに合った柔軟な公演企画や、次代を担う舞台技術スタッフの育成強化につなげる。同法人代表理事の長井誠さん(52)は「市民参画型の舞台という丹波市の『財産』を継承したい」と力を込める。

委託業務は▽市主催の自主公演の企画、運営▽チケットの販売や窓口対応▽バンド、ピアノ、ダンス、和太鼓の「アマチュアアーティスト育成支援事業」の舞台運営、出演受け付け▽舞台裏方のボランティアスタッフ「市立文化ホールオペレータークラブZERO―Ⅳ(ゼロフォー)」の技術指導―など。市からの委託費は約3865万円。

市は25年以上にわたり、同クラブのスタッフと協働し、アマチュアアーティストによる公演など、市民参画型のホール運営を実践。同様の取り組みを行う自治体は少ないという。2020年には地域活性化を目指し、文化芸術活動を推進する方向性を定めた基本計画を策定した。

一方、ホール運営を担う職員は3―5年程度での異動が多く、舞台や照明、音響といった設備の専門知識を持つ人材育成が困難。市が公演を企画する際には複数の部署との調整が必要で事務処理に時間を有していた。

質の高いホール運営を継続するため、事業企画などの際には柔軟性があり、高い専門知識を持つ民間団体を設立する案が持ち上がり、20年度から市やホール関係者らで協議を重ねてきた。

同法人の立ち上げメンバーは5人。市職員時代にホール運営に関わり20年以上のキャリアを持つ長井さんをはじめ、いずれも市職員や同クラブのスタッフとしてホールの運営経験が豊富。

現在、思案するのは、同クラブ会員の研修プログラムの見直し。レベルに応じて内容を変えるなどし、会員増加を目指す。高い技術を持つリーダークラスの会員は次代を担うスタッフとして、法人メンバーとしての採用ももくろむ。

市民からの声を踏まえて子ども向けの公演を企画したり、アーティストを招いたりすることが、同法人の判断でできるようになった。地域や学校の文化祭で、照明や音響をサポートする役割も積極的に担いたいという。

「ホールという存在は、ときには衝突もし、みんなで練習しながら目指せる貴重な『目標』になっている」と長井さん。現在は非営利法人のため、「法人として事業を主催できるよう、市の指定管理を受けることが目標」と語り、「学校の文化祭のようにわくわくする気持ちを味わえる、アイデアの集合体のような法人が理想」とほほ笑む。

関連記事