心温まる市松人形 染色から手がける作家が作品展 季節感あふれ色鮮やか

2024.05.05
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 兵庫県丹波篠山市にアトリエを構える市松人形作家、土田早苗さん(87)=同県川西市=の作品展(丹波新聞社など後援)が、植野記念美術館(同県丹波市氷上町西中)で開かれている。季節感あふれる色鮮やかな着物を着せた市松人形など68点を展示。「子どもたちに喜んでほしい」という願いを込め、手作業で仕上げたかわいらしい人形の数々が来場者の心を温めている。5月19日まで。

元々服飾デザイナーだった土田さん。1976年、娘の誕生日に抱き人形を制作したのをきっかけに人形作りを始めた。独学で染色から手がける市松人形は「早苗市松」と称され、フランスやアメリカなどでの個展も実現。89年ごろ、四季が感じられる丹波篠山にアトリエを構えた。

2000個のヒメサラレイシ貝からおよそ1グラムしか採れないという希少な染液を使った作品も

ピンク色のボタンのししゅうや、爽やかな青色のアジサイ、秋らしいキクの文様などの着物が目を引く。2000個のヒメサラレイシ貝からおよそ1グラムしか採れないという希少な染液を使った作品もある。

創作活動の原点で、「抱きしめる娘のうれしそうな笑顔が喜びになった」という抱き人形も展示。双子の孫の成人式のために織った黒と朱色の着物は、およそ6年をかけた大作で、来場者の注目を集めている。

土田さんの個展が丹波地域で開かれるのは初めて。土田さんは「AI(人工知能)などで何でも作れるように錯覚してしまう時代だけれど、手作業で、こつこつと手間をかけた作品の魅力も感じてほしい」とほほ笑む。

双子の孫の成人式のために6年がかりで織った黒と朱色の着物

11日には学芸員によるギャラリートークがある。

観覧料は一般400円、大学・高校生300円、小中学生200円、小学生未満無料。開館時間は午前10時―午後5時。月曜休館。

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