売り上げ戻らず、のしかかる融資返済 物価高で財布のひも固く コロナで変わった、変わらなかった世界④

2024.06.18
丹波市地域注目

新型コロナによる経営悪化を受け2020年12月末で指定管理者が撤退した休養施設「やすら樹」。現在も活用されず、コロナ禍の負の遺産の象徴になっている=兵庫県丹波市氷上町清住で

2019年12月、中国・武漢で確認され、またたく間に世界中で大流行した新型コロナウイルス感染症。繰り返される大きな感染の波、「緊急事態宣言」などを経て、昨年5月に感染症法上の位置づけが「2類」から「5類」に変更され、季節性インフルエンザなどと同じ扱いになった。5類移行から1年が過ぎた今、兵庫県丹波市においてコロナで変わったこと、変わらなかったこと、元に戻ったことを検証する。

地域経済も大きな打撃を受けた新型コロナウイルス禍。県内の商工会で最多の会員2054人(3月末)が加盟する丹波市商工会。倒産する会員も一部あったが、事業再構築補助金、持続化補助金、融資、さまざまな支援策を利用し、ほとんどの会員がコロナ禍を乗り切った。

市商工会の四方啓介事務局長は、「5類移行で巻き返しを狙っていたが物価高。財布のひもは固く、コロナ前の水準に戻ったという声はほぼ聞かない。融資の返済があるが、売上が戻っておらず、明るい話はなかなかない」と語る。コロナでキャッシュレスが定着。支払いの多様化が進んだが、決裁システム利用料、入金までに時間を要するなど、「運転資金が要ると、悔やむ声も聞く」(四方事務局長)。

◆大人数宴会や2次会なくなる

外食産業のうち、昼営業の飲食店は「ほぼコロナ前に戻った」の声を聞く。アルコールを伴う夜営業の店は芳しくない。居酒屋との取引が多い荻野与作商店(柏原町柏原)の荻野均さんは「戻りは7、8割。40人、50人といった仕事関係の大口飲み会は戻らず、個別、小グループ客が多い」と言う。材料、光熱費の高騰で利益率は圧迫されている。

「2次会がなくなった。深夜のタクシーがさっぱり動かない」と、タクシー会社、氷上交通(氷上町石生)の足立安夫会長は嘆く。深夜料金になる午後10時前には“お開き”。閑古鳥が鳴く店は早く閉める。「悪循環。丹波市の夜が『早くなった』」

貸し切りバスやバス旅行を手がける氷上観光(同町氷上)の足立寿宏取締役業務部長は、「完全に戻ってはいないが、ツアーはいい。学校関係は完全に戻った。地域団体や仲良しグループの貸し切りバス旅行が戻らない」と言う。来年の関西・大阪万博に期待を寄せる。

◆プレミアム券がカンフル剤に

ショッピングセンター、丹波ゆめタウン(同町本郷)を運営するタンバンベルグの土井恵介社長は「コロナ前の2019年度には、もう少し戻っていないが、5類になってから回復が続いている」と言う。業種によって濃淡があり、衣料品で回復が遅れている印象を持っている。「お客さんの引けが早い。購買行動が変わった」とも。

市が発行するプレミアム付き商品券が「地域経済のカンフル剤になっている」と言い、継続を願っている。
釣り具メーカー、ささめ針(山南町野坂)の篠倉庸良社長は、「売上が急に増え、急に減った。今はコロナ前より少し落ちている」と話す。「3密を避ける」アウトドアブームに乗り、21年まで好況。その後、下方線を描いた。

得意先への営業活動はコロナ前と同様。「メーカーは店舗巡回が必要。対面営業に来るところ、来ないところがあれば、来るところの商品を買う」。同社は海外に製造拠点があり、円安ダメージも受けている。「価格転嫁しづらいし、人手不足、賃上げ。製造業はどこも厳しいだろう」とコロナ以外の悪要因を挙げた。

障がい者就労支援B型事業所も、コロナ禍に取引停止など大きな影響を受けた。市障がい者施策推進協議会の就労支援部会長、大槻真也さんは「どこも何とか別の仕事を開拓するなどして乗り切られた」と言い、自身が社長を務める会社が運営する同事業所は、草刈り、家の片付けなどに活路を見出した。「不況でも草は伸びる」

◆セーフティ保証認定 再び増加

市はコロナ初年度の20年、「セーフティネット保証制度」で830件を認定した。経営が不安定な中小事業者が一定の要件を満たし、市長が認定する場合に一般保証限度額の別枠化などを行い、同限度額と同額まで保証されるもの。21年度81件、22年度30件と減っていったが、昨年度は96件と増加。実質無利子、無担保で融資を受けられた「ゼロゼロ融資」(20―22年9月貸付)の返済開始に伴う借り換えが多かったとみている。有利な融資とはいえ、景気が戻らなければ返済は重荷。景気回復は切なる願いだ。

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