行事見直しで負担減 一気に進んだICT活用 コロナで変わった、変わらなかった世界②

2024.06.11
地域

一斉休校からの再開後、丹波市の青垣小は、目安とされた身体的距離「1メートル」が取れなかったため、6年生を2クラスに分け、一方は隣の教室からオンラインで授業を行った。児童は机を1列空けて座った=2020年6月、兵庫県丹波市青垣町佐治で

2019年12月、中国・武漢で確認され、またたく間に世界中で大流行した新型コロナウイルス感染症。繰り返される大きな感染の波、「緊急事態宣言」などを経て、昨年5月に感染症法上の位置づけが「2類」から「5類」に変更され、季節性インフルエンザなどと同じ扱いになった。5類移行から1年が過ぎた今、兵庫県丹波市においてコロナで変わったこと、変わらなかったこと、元に戻ったことを検証する。

新型コロナウイルスで大きな影響を受けたのは、大人たちだけではない。

感染拡大に伴い、2020年3月2日、全国の小中学校が突然の一斉休校に入った。その後、卒業式、入学式は行われたものの、学校が再開されたのは6月1日になってからだった。あれから4年。兵庫県丹波市内の小中学校長らに話を聞いた。

再開後、学校にはさまざまな制約が課せられた。マスク着用、「接触を避ける」体育、「歌なし」の音楽、給食の「黙食」、「学校の新しい生活様式」マニュアルに従った手洗い、消毒…。これまでとは異なる指導を求められる日々が続いた。

ある小学校長は「子どもたちに『大きな声であいさつしましょう』と言っていたのが、コロナ対策で『大きな声は出しません』に変わった。そのときは仕方がなかったが、今思えば不自然な指導をしなければならなかった」と振り返る。

5類移行後は授業の制約は全てなくなった。普段の生活での消毒の声かけはなくなり、手洗いもコロナ前の指導にほぼ戻っているという。

ただ、マスクは今も一定数の「外せない」子がいる。ある中学校は現在、多い学年で半分、少ない学年で1―2割ほどがマスクを常時着けているという。

「周りを見て行動するので、違いが出ているのでは」と校長。「外すのが恥ずかしい」という声も聞き、「感染予防もあるが、マスクが癖になっているのでは」と感じている。「生徒同士はそれも個性として認め合っているようだ」としつつ、「子どもたちには素の自分を見せてもいいんだよ、と伝えたい。顔を隠すためのマスクはなくなる方がいい」と語った。

同市教育委員会の資料によると、30日以上の長期欠席のうち「不登校」の児童生徒は、コロナ禍における全国的な傾向と同じく、同市でも増加した。2020年度は小学校で17人(児童生徒数の0・5%)、中学校で63人(同3・9%)だったが、21年度はそれぞれ23人(同0・7%)、93人(同5・8%)となり、中学生で急増。中学生は22年度が最多で、106人(同6・8%)だった。昨年度は102人。小学生は21年度から増え続け、昨年度は45人(同1・5%)だった。

コロナ禍と不登校の数は比例しているように見えるが、中には5類に移行した昨年度に一気に増えた学校も。ある中学校長は「不登校が増えた直接の原因がコロナといえるかは疑問。その子自身や家族の事情など、別の要素が複雑に絡み合っていると感じる」と肌感覚を話した。

一方、「プラス面に大きく変わった」と校長らが口をそろえるのが、情報通信技術(ICT)の活用だ。

一斉休校当時、国は1人1台のICT端末を配布する「ギガスクール構想」を示していたが、実現はまだだった。

市内各校は、家庭の機器の使用を依頼し、インターネットを活用した学習の継続を模索。オンライン会議ツールを使って「朝の会」を開いたり、体力づくりの動画を配信したりもした。同構想は前倒し実施され、同市は20年度末までに1人1台のタブレット端末を導入。以降、授業での活用が一気に進んだ。今や小学生も、学習のまとめや発表にタブレット端末を使いこなす。

また、市教委によると、特に中学校で不登校の生徒に対する授業のライブ配信が定着したという。インフルエンザなどでの臨時休業時に、オンライン授業を行っている学校もある。

小中学校の行事も様変わりした。運動会や体育祭は種目を減らしたり、内容を変更したりした。入学式や卒業式の式典は、来賓数を大幅に絞った。「前例踏襲でやってきた行事は、子どもにも教員にも負担感が大きくなり過ぎていた」と、ある校長。「コロナ禍が明けても元には戻さず、工夫して効果を出そうという雰囲気が生まれた」と捉えている。

変わらないのは「子どもたちの普段の姿と、先生方の頑張り」。複数の校長が話す。ある校長は言う。「仲良くなったり、けんかをしたりしながら、集団生活の中で人とつながることは、学校でしかできない経験。コロナ禍は、『学校の価値や役割は何か』を改めて考える契機になった」

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