兵庫県丹波市市島町美和地区自治振興会長に今年度、42歳という異例の若さで伏田尚徳さん(同町酒梨、乙河内出身)が就任した。前会長の渕上利美さん(81)=同町与戸=が体調不良により、2年の任期途中で退任。副会長だった伏田さんに白羽の矢が立てられた。一回りも二回りも年上の会員を束ねる難しさを痛感しつつも、自身が生まれ育ち、三輪小学校の閉校が迫る郷里を未来へ残すべく、奔走する。
伏田さんは、米や黒大豆などの野菜を育てる「伏田農園」を地元で営む。20、30歳代の若者が多い「城ヶ花団地」の自治会長を務めた経験もある。昨年度は、渕上さんから「(中学、高校の)先生などさまざまな資格を持っており、私たちより賢く、新しいことを考えられる。若い力で盛り上げてほしい」と、2人いる副会長の一人に指名された。
渕上さんは3期目の途中で体調を崩し、退任を余儀なくされた。伏田さんは、渕上さんから「助けてくれ」と会長就任の打診を受けた。消防団部長や民生委員なども兼務し、「安請け合いしてしまう」という伏田さん。「利美さんが困っている。手伝えることがあるなら」と引き受けた。
地区の自治会長や振興会役員らが出席する理事会と総代会で承認され、就任が決まった。任期途中での交代のため、伏田さんは暫定会長として今年度末まで務める。「事業計画通りに進め、閉校イベントや閉校記念誌の予算など、計画の『土台』をつくりたい」と話す。
振興会の2カ月に1回の理事会や月2回の幹部会、イベントの打ち合わせといった会合や、月に1回の同町振興会長会、市内団体の総会など、出席しなければならない会合は多数。「大半が昼間の開催。仕事は大丈夫ではないですね」と苦笑する。
「地区の会議では父親と同じ世代が大半。意見を尊重はしてもらえるが、言葉に説得力が持たせられない」と感じている。「利美さんからは「『権限はないが、責任はある。だからしんどい』と言われていた。今になってその意味が分かる。積み重ねるしかない」と、また苦笑いを浮かべる。
自身も3人の子を持つ父親。来年度末に三輪小の閉校が迫る中、地域衰退への「危機感」が原動力になっている。「今が美和地区にとって『過渡期』。ここからの10年で未来がだいぶ変わる」と語る。
「僕らが子どもの頃には、子ども会や地蔵盆などに参加しておじいちゃんから話を聞き、地域への愛着が生まれていた。今の子どもたちにもそんな経験をさせてやりたい。10年後、僕らがしんどくなった頃に、大きくなったその子たちが手伝ってくれるかもしれない。役職が上の人が『頭脳』になり、20、30歳代の若手に動いてもらえるのがベスト」と地域の未来を展望し、「時代に応じたより良いやり方で、地区を残していきたい。統合後の学校に通う子が『俺は美和や』と言えるように」と力を込める。
渕上さんは「多くの年寄りの意見を聞き、若い人の意見も取り込みながらうまいことやっていってくれたら」と期待している。
丹波市によると、同市内の自治協議会で40歳代の会長は「聞いたことがない」という。会長に就任するのは、自治会長を経験した60、70歳代が大半。