〝最速〟更新へ酒蔵が応援 米の大会臨むライダーに共感 祝杯挙げる日本酒販売

2024.08.22
地域注目

世界最速記録更新を応援したいと販売した日本酒を手にする荻野さん(左)とライダーの近兼さん=兵庫県丹波市氷上町成松で

兵庫県丹波市市島町上牧にある「鴨庄酒造」が、24日から米・ユタ州で開かれるオートバイ国際大会「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアルズ」で自身が持つ世界最速記録更新を狙うライダーで、市内にある映画館「ヱビスシネマ。」の支配人・近兼拓史さん(62)=西宮市=を応援したいと、ゼッケンナンバーの「612」と「707」をラベルデザインにした日本酒の販売を始めた。

世界最少の4人のチームを率いて戦う近兼さんと、「世界最小」を自称する酒蔵が共鳴。記録を更新したあかつきには、2種類の日本酒で祝杯を挙げる。

「612」はすっきりしていて飲みやすく、「707」はフルーティーで爽やかな味わい。ラベルは、出場するマシンのデザインをイメージした。売り上げの一部はチームの支援に充てる。「612」の数字は近兼さんの結婚記念日で、「707」は息子の誕生日にちなむ。

同酒造は、安価なパック酒用原酒を他社に販売する「桶売り」を主力にしていたが、日本酒離れにコロナ禍が重なり、2020年には年間生産量が10石まで落ち込んだ。蔵の存亡をかけ、自社銘柄の日本酒、純米酒だけを醸す蔵に業態転換。昨年の生産量は40石まで増えたという。

一方、近兼さんは2019年、日本製品の技術の高さを示したいと、国産車「スーパーカブ」をベースにした国際大会用マシンを全国各地の金属加工会社と共同開発し、同大会に出場。10人ほどの少数精鋭で臨み、6部門で世界最速記録(50ccでは、平均時速約101キロ)を打ち立てた。

翌年以降、さらなる記録更新を目指したが、20―23年は新型コロナや悪天候の悲運で大会出場がかなわず、開発や渡米などにかかった莫大な費用がのしかかった。

昨年と今年に行った走行テストでは相次いで世界最速記録を更新し、手応えをつかんだ。本番で記録更新を果たした際には「コンセプトに近い酒蔵の酒で祝杯を挙げたい」と、同酒造にコラボを打診。一度は〝どん底〟を味わい、世界的な小規模でありながらも挑戦を続けた両者が手を組んだ。

同酒造専務取締役の荻野弘之さん(57)は「(近兼さんが)挑戦を続けられる限りは応援していきたい」と、来年以降も応援日本酒の製造・販売を続けるという。

近兼さんは「4年間、非常に苦しい思いをした。そのエネルギーをぶつけ、記録更新に臨みたい」と静かに闘志を燃やし、「世界中から選手が訪れる大会で『乾杯』し、日本酒の魅力も伝えたい」と話す。

共に720ミリリットルで1800円。

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