詩吟の「大阪府吟士権者決定詩吟大会」が6月、同府内で行われ、予選から約1400人が出場した一般の部で、丹波市春日町の安田和典さん(44)が、最優秀賞にあたる「吟士権者(府知事賞)」に輝いた。一昨年、昨年と続けて決勝に進出するも、あと一歩で頂点を逃していた。リベンジを期す今大会では抑揚をつけながら、持ち前の高く、伸びやかな歌声を響かせ、悲願を果たした。
予選では、西郷南洲(隆盛)の約2分の日本詩「偶感(偶成)」を披露。16人で争う決勝への進出を果たした。決勝は約4分の中国詩「過零丁洋」で出場。「声が十分出たし、心も込められた。吟じ終えた後には『歌い切った感』があった」という会心の歌声を披露した。
同大会で一昨年は3位。昨年も決勝に進出したが、詩の言葉を間違える痛恨の誤読を犯し、失格に。悔しさをばねに練習を重ねた。今までは単調に吟じていたというが、ストーリーに応じて吟じる速さのメリハリを付けるように意識した。
レコード会社などが主催する小規模大会で優勝したことはあったが、大規模大会で頂点に立ったのは初めて。「単純にうれしい。所属する大阪の『吟道素心会』の会長をはじめ、先生方の教えがあってこそ」と喜ぶ。「9月に控える西日本大会でも、もちろん優勝したい。今回の結果に満足せず、さらに精進したい」と気を引き締める。
大阪でサラリーマンをしていた20歳代後半の頃、同会で琵琶を演奏する知人から「声が良い」と勧められたのがきっかけ。同会に入会した他、地元、丹波市でも年齢や経験、流派を問わないグループ「吟遊丹波」を立ち上げた。市内の高齢者大学などに出向き、ボランティアで詩吟を披露している。
「自分の声が『楽器』になる。お腹から声を出せる機会は普段はないし、気持ち良い」と魅力を語り、「敬老会やいきいきサロンなど、呼ばれれば市内のどこにでも行きますよ」と笑う。