屋根葺き替え機に音楽を 参拝者が合唱「観月コンサート」 貴重な文化財伝わる中加茂神社

2024.09.14
地域地域歴史観光

垂木で手作りしたお守りを手に、遷座行事とコンサートへの来場を呼びかける塩見さん=兵庫県丹波市市島町中竹田で

兵庫県丹波市市島町中竹田の中加茂神社本殿の屋根が、檜皮葺から銅板にふき替えられたのを機に、同神社で16日午後4―6時、遷座行事と「観月コンサート」が開かれる。地元住民らが南京玉すだれやハーモニカ、合唱を披露する。同神社には、丹波を代表する彫り物師・中井権次一統が手がけた彫刻や、京都の「松尾七社」の一つから贈られたと伝わるみこしなど、貴重な文化財が残る。企画した代表総代の塩見和広さん(70)は「参拝者に『神社を後世につなぐ』という思いが芽生えるきっかけになれば」と話す。

光畑信子宮司による神事の後にコンサートがある。ハーモニカの音色に合わせ、参拝者で合唱する時間も設ける。希望者には、本殿の屋根を数百年支えた垂木を活用し、塩見さんらが手作りしたお守りを手渡す。300円(氏子は無料)。

前回の屋根のふき替えは約40年前に行われた。劣化により雨漏りが目立つようになり、5年ほど前に工事を決めた。次世代の氏子に苦労させないようにと、比較的長持ちする銅板に切り替えた。費用は氏子で積み立ててきた。

同神社は創建360年以上。1719年には、神社で最高位の神位「正一位」を授かった。現在は、中竹田地区内の5集落の約120人が清掃や行事の準備などを担っている。

龍やツル、カモ、ツバメなどがモチーフになった、精巧で躍動感にあふれる彫刻が随所に見られる。秋の「丹波竹田祭」で巡行するみこしは、かつて京都の大宮社で使われていたという。修復工事の際に丹波の木材が使われ、そのお返しとして贈られたと伝わる。

左官職人が壁塗り道具の鏝を使い、模様を浮き彫りにした「鏝絵」も残る。拝殿の正面には、青色が鮮やかで「加茂神社」の文字が描かれた扁額が掲げられている。みこし倉庫の軒下には、葵と菊の紋様が描かれている。

今回の工事中に、過去の工事完了時の記念に建築年日や関係者の名などを刻んで取り付けられた「棟札」も見つかった。塩見さんは「多くの人が神社を守ってきたことが分かり、われわれも次につなげなければ、という使命感が湧いた」と言い、「若い世代にも足を運んでもらいたい」と熱を込める。

コンサートは入場無料。小雨決行。駐車は近くの公民館などに。

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