大市住宅産業(本社・兵庫県丹波篠山市吹新)の大工で、県土建一般労働組合篠山支部所属の長濱千郷さん(31)=同県三田市=が、14―16日に愛媛県松山市で開かれる、若手大工が伝統技術の腕を競う「全国青年技能競技大会」(全国建設労働組合総連合主催)に出場する。7月に姫路市で行われた県大会で4位に入り、出場権を得た。長濱さんは、「会社からエアコン付きの練習室まで用意してもらい、全国大会本番には従業員の皆さんも応援に駆けつけてくれる。それらの思いに報いるためにも入賞できるよう頑張りたい」と話している。
長濱さんは、昨年の県大会では振るわず、2度目の挑戦でリベンジを果たした。
大会は満36歳以下の若手大工が対象。県大会には9人が出場し、女性は長濱さんただ一人だった。昨年の苦い経験をばねに、苦手なのみで穴を掘る「ほぞ穴」の工程を何度も練習し、本番に備えた。
「四方転び踏み台」という高さ60センチの木製の脚立を作るのが課題で、原寸図面の作製、木材を削る、墨付け、組み立てまでを6時間以内で行う。さしがねを使った規矩術を駆使し、機械を使わない伝統的な大工技術の高さと制限時間内に仕上げる集中力が試される。
県も全国も課題は共通。全国大会には70人前後が出場する。
長濱さんは入社5年目。小学校から高校までサッカーで汗を流した。体育教師を志し、鹿児島大学教育学部へ。卒業後、サッカーではなくラグビーの実業団選手として活躍した時期も。その後、ワーキングホリデーで滞在したニュージーランドで、塗装のアルバイトをした際、建築に興味を持った。帰国後、鹿児島県の職業訓練校で2年間、寮生活を送りながら大工のイロハを学んだ。
同社の大前裕樹代表取締役(49)は、「子どもの頃からサッカーで鍛えてきたためか、体力もあり弱音も吐かず、熱心でまじめ。今年から棟梁として現場を任せている。丁寧な仕事ぶりで、現場はいつも整理整頓が行き届いている」と評価し、「レベルの高い兵庫県から勝ち上がってくれた。初の全国の舞台。入賞どうこうと気にせず、精いっぱい頑張ってほしい」とエールを送っている。