ウクライナ語などの通訳・翻訳者として活躍する兵庫県丹波市の河津雅人さん(38)がリーダーを務めるプロジェクトチームが、ロシアから侵攻を受けるウクライナのテレビ局から提供を受けたニュース映像などを日本語訳し、インターネット上で無料配信するメディアプラットフォームを立ち上げようと、設立・運営資金を募るクラウドファンディングに挑戦している。
ニュース映像などで戦闘や被害の状況、戦時下を生きる住民の暮らしなどを伝えるほか、ウクライナ避難民の支援に従事してきたつながりを生かし、避難民の現状を取材して制作する独自のドキュメンタリーを世界に配信する。河津さんによると、日本に拠点を置きながら、ウクライナ報道に特化したメディアプラットフォームは国内初という。
河津さんが勤務する、通訳・翻訳者をクライアントにコーディネートする会社「エリコ通信社」(東京都)の事業の一環。一連のプロジェクトの展開は、河津さんがリーダーを務めるチームが同社から一任されており、ウクライナ人の通訳者、翻訳者ら日本在住の6人が所属する。
ウクライナの南部、ザポリッジャ州に拠点を置くテレビ局「MTMザポリッジャ」と契約。同局が報じたニュース映像の提供を無償で受け、チームで日本語訳してネット上に配信する。プラットフォーム名は「MTMJapan」。
南部戦線における状況や、同州にあって現在はロシアが占拠する欧州最大の原発「ザポリッジャ原発」に関する情報、一般的な現地のニュースなどを扱い、週5回ほど配信する計画。
河津さんによると、侵攻以降、日本では在留資格の更新や就労などの面で、これまでより安定した在留が可能になる「補完保護対象者認定制度」が施行されるなど、避難民を取り巻く環境が変わってきた。一方で、避難民は子育てや言語習得など、あらゆる面で苦労しており、避難民の現状を取材して動画にまとめ、日本における支援内容をウクライナ語と英語で世界に発信する。
2年前、友人のジャーナリストに会うため、ウクライナ入りした河津さん。その友人の紹介で、同局を訪問した。昨夏には同社代表のユーリ・ユルチェンコ氏とも会談。かねてからウクライナ情勢を専門に伝えるメディアの必要性を感じていたことや、同局からも同じような提案があったことで、プラットフォーム設立に向けた動きを加速させた。
地元メディアが報じた「1次情報」を伝えることを重視するという河津さん。「ウクライナの人は、自分たちを取り巻く状況が世界に正しく伝えられていないのでは、という思いを持っている」と語る。「戦争報道という、最も困難なミッションに挑戦する。ニュースを通じ、視聴者がどのような思いを抱き、考えるのか。その人への判断材料になれば」と話している。
目標金額は200万円。目標に達しなければ、支援者に返金する。支援金額に応じたリターンを用意しており、ウクライナの伝統刺しゅうを施したテーブルクロスが進呈されたり、MTMザポリッジャとオンライン対談ができたりする。資金募集は24日まで。
「ウクライナ専門メディアプラットフォーム」などで検索を。
◆河津さんが座談会 23日午後2―5時、iso乃家(兵庫県丹波市氷上町石生)で。「通訳―世界とつながる仕事 Uターンで丹波市で暮らすこと」と題し、ウクライナ語などの通訳・翻訳者として活躍する河津雅人さんが登壇する。地元の丹波市で暮らしながら、通訳という仕事に従事する河津さんが、これからの市での働き方や暮らし方について話す。挑戦中のクラウドファンディングについても語る。参加無料。申し込み不要。