兵庫県丹波市の余田康夫さん(64)が、鉱石「ろう石」にヘビや亀、犬など細かな彫刻を施して楽しんでいる。書道家として活動する余田さんは、「書道という平面的な作品作りには取り組んでいるけれど、立体的な彫刻は初めて。『うまく彫れるかな』と思って」と、興味本位で挑戦を始めたところ、「意外とできた」と笑う。やがて制作に熱がこもり、「観音さま」やミロのビーナスなど、より細かな作品を次々に仕上げている。
ろう石の用途はさまざまあるが、かつて子どもが道路に絵を描いて遊んだりした。余田さんが彫刻をしているのは直方体のろう石で、彫る面は1センチ×1センチほどと狭い。
書道作品に押す印を彫る「篆刻」の経験は何度かあり、持っている専用の彫刻刀を使って彫り進めている。写真など手本を見ながら、2―4時間ほどで完成させる。
昔ながらの駄菓子店「余田商店」を営む余田さん。今年、問屋がろう石を扱っているのを知り、仕入れてみたところ、「柔らかい石だし、彫ってみたらどうなるだろう」と興味が湧いたという。巳年にちなんでヘビを彫ってみると、思いのほか上出来だったため、難易度を上げながら制作を進めた。
商品のろう石に彫ることはほどほどにし、篆刻用に持っていた石に大黒天や恵比寿天、ゴジラを次々に彫った。「彫りかけるとやめられない。小中学生の頃は彫刻が苦手で、制作を投げ出していたくらいなのに」と笑う。
魅力を「彫り進めていくと、全体像が浮かんでくるところ」と目を輝かせる。「書道の印を彫るのではなく、まさか持ち手の部分を彫ることになるとは」と笑顔。「ろう石というものを知ってもらうきっかけになれば」と話している。