農家や飲食店とコラボも 「食のストーリー描きたい」 人気動画チャンネル運営の制作会社が丹波本社

2025.04.19
丹波市地域地域

縫製工場だった名残で、裁断機が残る社内。「歴史をつなぎたいという思いから、あえて残した」と語る聖矢副社長=兵庫県丹波市春日町国領で

飲食店に密着取材し、そのにぎわいを届けるだけでなく、店の歴史や技術、文化、思いなどをドキュメンタリーにまとめた動画を配信する事業などを手がける会社「FOOD MEDIA JAPAN(フードメディアジャパン)」(本社・兵庫県加古川市、松田聖司代表)が、同県丹波市春日町国領の縫製工場だった建物に丹波本社を構えた。動画投稿サイト・ユーチューブの「食」にまつわる複数のチャンネルを運営しており、登録者数は計110万人以上。丹波本社では、地元の農家や飲食店などとコラボし、それぞれの思いなどを届ける動画作りに励むという。

飲食にまつわる6つのチャンネルを展開。パン店に特化した「パンものがたり」が登録者37万人、兵庫や京都のうどん、そば店を紹介する「うどんそば兵庫京都」は65万人を超え、人気のチャンネルに育て上げた。

動画制作で意識しているのは、「裏側」を見える化すること。店の一日に密着し、その歴史や技術、こだわり、仕込みの様子、調理の際の音、客の笑顔などを盛り込んだドキュメンタリーに仕立てる。松田聖矢副社長(32)は「食へのこだわりや丁寧な仕込み、スタッフのチームワーク、生産者とのつながり。客には見えない部分にもストーリーがあると考えており、その物語を描きたい」と話す。

松田社長(32)と聖矢副社長は、沖縄県与那原町出身の双子。兄の聖矢副社長は大学時代、兵庫県三木市の関西国際大学で学び、兵庫と縁がある。二人は県内の同じ飲食店でアルバイトし、共に飲食関係での起業を夢見ていたという。

母の手料理が好きだった一方で、幼い頃から外食に強い憧れがあったという二人。原材料費や人件費などの高騰や、省力化のための機械化に投資がかさむなどし、老舗店が閉店せざるを得ない状況を目の当たりにするたび、食文化が廃れるのではないかと危惧し、食文化にイノベーションを起こせないか考えていたという。

先に松田社長が、妹の紗和乃さんらと共に2021年、兵庫県稲美町で同社を設立。ユーチューブチャンネル「うどんそば兵庫京都」が人気を博し、後に聖矢副社長もメンバーに加わり、新たなチャンネル「パンものがたり」も好評を得た。

新たに構えた丹波本社

昨年、「パンものがたり」の動画撮影で、市島製パン研究所(丹波市市島町喜多、三澤孝夫代表)を訪問。三澤代表は、丹波地域をはじめとする飲食店の経営相談に乗ったり、新店舗をプロデュースしたりする活動にも力を入れており、その一環で春日町国領地区に喫茶店を開店するなど地域を活性化させている姿に着目したという。

そのにぎわいづくりを追ったり、得意とする「食」を切り口に地域の農家に話を聞いたりして、農業や飲食に光を当てた動画をつくる拠点として丹波本社を設けた。

聖矢副社長は「動画やネットの力で、食産業をどう盛り上げられるか。農家のドキュメンタリーを撮ることも考えており、食のコミュニティーの助けになることができれば」と話している。

詳細はホームページから。

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