兵庫県丹波市の氷上高校野球部が、19日に開幕する春季県高校野球大会に出場する。同校によると、1968年(昭和43)以来57年ぶり。前回は、前身の氷上農業時代にさかのぼる。同県の丹有、但馬地区の高校が出場した但丹地区大会を勝ち抜き、同地区の4校に与えられる出場権を獲得した。部員は11人、けがなどで2人が出場できず、ぎりぎりの9人での戦いとなったが、身上とするチームワークの良さとミスを恐れない思い切ったプレーで半世紀以上ぶりに強豪への挑戦権を得た。選手たちは「新たな歴史を刻んだ」と胸を張っている。
春季県大会は、各地区大会を勝ち抜いた34校と、昨秋の近畿地区大会に出場した東洋大姫路、神院大付、三田学園の推薦3校が出場する。夏の甲子園の県予選でのシード権を懸けた戦いとなる。氷上は2018年、秋季県大会に出場したが、春季県大会は長らく出場がなかった。
氷上は香住、和田山、北摂三田とのブロックに同居。初戦の香住戦では、初回から着実に得点を重ね、6―1で快勝した。
続く代表決定戦では、昨秋の県大会に出場した北摂三田と対戦。氷上は三回表、9番川本快大さん(2年)がレフト線を破る三塁打を放ちチャンスメイク。その後、無死満塁とすると、3番前林明磨主将(3年)がレフトに犠飛を放って先制した。この回、相手のミスに乗じてさらに1点を加えた。六回表には、8番瀧谷俊樹さん(2年)のスクイズが決まって加点。七回裏に1点差に迫られたが、九回表に2点を追加して相手を突き放した。投げてはエース右腕の貝塚征也さん(3年)が完投。5―2で勝利した。
3年生4人、2年生7人。マネジャーはいない。原智徳監督は「個々の能力は決して高くない」と話す一方で、チームの特長を「チームワークの良さ。互いに支え合う精神を持っていることが大きい。高い集中力で黙々と練習できていることが強み」と話す。放課後の練習では、少人数とは思えないほど声が飛び交い、それぞれがチームを鼓舞している。
そんなチームが自信に変えているのが、雪が積もったグラウンドで、長靴を履いて取り組んだバッティング練習「ロングティー」という。原監督は「こんな環境でも練習をしたという自信が支えになり、見えない力になったのでは」と目を細める。
練習メニューは、選手たちが決める。前林主将がメンバーに投げかけ、チームが課題と捉える練習に励む。前林主将は「自分たちで決めた方が、チームは成長できる」と自信をのぞかせつつ、「県大会は久しぶりの出場過ぎてびっくり」と目を丸くする。「強豪ばかり。緊張すると思うが、いつも通り声を出して臨みたい」と闘志を燃やす。また、捕手で4番を打つ徳平怜さん(3年)は、「氷上高校の歴史を塗り替えた。夏のシード権が取れるように頑張る」と語った。
唯一の「丹波っ子」の岡田柊真さん(2年)は、2番打者を務める三塁手。市外出身の他のメンバーは寮などで生活しており、入部当初は会話に入れなかったという。「でも、すぐに仲良くなった」と笑顔を見せる。57年ぶりのひのき舞台を前に、「持ち味の間を抜く打撃や、バントなど小技で勝利に貢献する。県1勝を目指す」と力を込めた。